エアビーアンドビー(Airbnb)は、国内旅行市場の本格的な回復期に、地方での関係人口創出に力を入れていく。Airbnb Japan代表の田邉泰之氏は、「関係人口は、地方と都市あるいは地方と地方との新しい導線を生む。その導線の創出で貢献できると考えている。人が動くと、そこに新しい収入ビジネスが生まれ、新しいエコシステムができあるのではないか」と話し、同社単独ではなく、同社パートナー企業である「エアビーアンドビー・パートナーズ」とともに、新しいソリューションを提案していく方向性を示した。
同社では、関係人口の創出に向けて、自治体やDMOなどとの連携を強化していきたい考え。田邉氏によると、地方は一回の打ち上げ花火ではなく、最終期には移住・定住につながるような継続的な取り組みを求めていることから、「単純なホームシェアリングだけではなく、移住・定住への足がかりになるように、2拠点居住(二地域居住)なども含め、いろいろな形で関わっていきたい」と意欲を示した。
また、ポストコロナに向けて、国内旅行と海外旅行での日本人ゲストの増加にも力を入れていく方針。日本市場では、これまで拡大するインバウンド需要を満たすため、ホストの獲得にリソースを注いできた。そのため、ゲスト獲得のための大規模なブランドキャンペーンは実施してこなかった。しかし、今後は「サンフランシスコの本社に対して、日本人ゲストの拡大に向けた投資を提案していく」考えだ。
そのうえで、エアビーアンドビーでは、ゲストを新たなホストにする戦略を進めている。同社CEOのブライアン・チェスキー氏は上場後初めての決算発表の際に「ゲストに対して、エアビーのユニークさ、ホストになる利点を伝えることで、ホストになってもらう取り組みを強化する」と方針を表明。新たに5年間のマーケティングキャンペーン「Made possible by Hosts」をグローバルに展開する計画を明らかにした。
これまではホストとゲストそれぞれにキャンペーンを展開していたが、「今回は新たに両方に向けて打つ」(田邉氏)。ホストの拡大で成功してきた日本市場では、現時点で特定の広告展開する予定はないが、独自に「ホストのおもてなしがもたらす、特別な旅」をタグラインとして、ゲスト獲得と並行してホスト獲得の訴求も高めていく。
世界的に改めてホスト拡大を目指す背景について、田邉氏は「コロナ後に、旅がすごい勢いで戻ってくると予想されている。そのためにも供給としてのホストを拡充していく必要がある。そのひとつの手段が、ゲストに対してホストになってもらうこと」と説明した。日本では、都市部よりも地方でのユニークなリスティング開拓に力を入れていく。
未来の旅行に関する意識調査、「つながり消費」がカギに
このほか、田邉氏は、Airbnb Japanが緊急事態宣言中の2月上旬に実施した日本人の旅行意識についての調査結果について説明。そのなかで、コロナ禍での人との繋がりについての質問に対して、「やや弱まった」と「非常に弱まった」を合わせると全体の55%、女性に至っては62%にのぼったことについて触れ、「リアルで会えないことがかなり影響しているのではないか」と分析した。
そうした意識の変化の中で、63%が「パンデミック後の最初の旅行は、パートナーや家族と一緒に行く」と回答し、自分の身近な人との繋がりを求める「つながり消費」旅の傾向が明らかになった。
また、コロナが落ち着いたら外出したいという人が増えていることも判明。旅行に年1回以上行きたい割合は78%、年2回以上は55%に及んだ。特に、GenZ世代(18~24歳)は、80%が「1年に1回以上の旅行をしたい」と回答し、旅の意欲がどの世代よりも高いことが分かった。
このほか、行き先では、「自然に近い場所」が最も多く40%。「自宅から近い車で行ける距離」(32%)が続いた。
田邉氏は「昨年の調査でも同じような傾向が表れていたが、今年には入って、それがさらに加速している印象」としたうえで、「ワクチン接種の状況にも寄ると思うが、旅行市場が2019年レベルに戻るには数年かかるだろう。旅のスタイルや働き方も含めたライフスタイルは変わり続けるのではないか」との見通しを示した。
トラベルジャーナリスト 山田友樹