欧州はゆっくりと旅行再開に向けて動いている。イタリアは、欧州とイスラエルからの旅行者に対して、PCR検査が陰性であれば、入国後の隔離義務を解除。また、イギリスからはレジャー旅行を認める「グリーンリスト」国への最初のフライトが2021年5月17日に飛び立った。
しかし、毎年夏になると混雑する大西洋路線ではまだ前向きなニュースはない。米国がグリーンリストから除外され、欧州連合(EU)がワクチン接種を完了したアメリカ人に国境を開くという話は、実現の目途が立っていないため、大部分のアメリカ人は、自宅近くで過ごすバケーションを予約している。
ユナイテッド航空のスコット・カービーCEOは5月17日に開催されたブルームバークのイベントで「フランス、ドイツ、イギリスなどの地域への路線では、予約の戻りは遅くなる」と話した。
一方、アメリカ人への入国規制を緩和したクロアチア、ギリシャ、アイスランドなどへのフライト予約は増えているという。需要が高まっていることから、同航空ではクロアチア・ドゥブロヴニク線の就航を早め、ギリシャ・アテネ線では機材を大型化した。
カービーCEO自身、この夏、家族旅行でクロアチアに行くことを明かした。
大西洋路線では、2度、夏の繁忙期を逃すことになるが、ほとんどの人はそれを驚きとは捉えていない。アナリストのヘレン・ベッカー氏は5月11日に、バイデン政権が「来週か10日後までに」海外旅行再開について何らかの決定を行うべきと主張した。
しかし、「アメリカ人は夏の旅行の計画を立てているところだが、大部分はメキシコ、ハワイ、アラスカ、カリブ海諸国、あるいは国内での旅行を継続することになる」と分析している。
米国の航空会社は今夏、近場のレジャーデスティネーションへの路線を強化。たとえば、アメリカン航空は、カンクン、ラスベガス、オーランド線で大型機を運航し、デルタ航空はでフェニックス、サンディエゴ線を強化している。
JPモルガンのアナリストであるジェイミー・ベイカー氏は「大手3社は、EUが受け入れを再開した場合、すぐに対応することは可能だが、必ずしもそうする必要はないかもしれない。ワクチン接種者に国境を開いたアイスランドやギリシャの路線の予約リードタイムは長く、需要の高いカンクンやラスベガスへ大型機を飛ばすことは経済的に理にかなっているからだ」と話す。
今年7月の大西洋路線の座席供給量は2019年比で約48%減。一方、米国国内線では9%の減少にしか過ぎず、カリブ海諸国、メキシコ、中米路線にいたっては約2%も増加している。
今夏、近場でバケーションを過ごすアメリカ人の傾向は、長期的な変化をもたらすかもしれない。アメリカン航空もユナイテッド航空も、アフターコロナでは以前とは異なる「国際線の路線図」が見られるかもしれないと明かしている。それぞれ、異なる路線図となるだろうが。
アメリカン航空のネットワーク・スケジュール計画担当副社長のブライアン・ゾノティンズ氏は「航空ビジネスに、永続的なものはない。我々が現在行っていることを、今後もずっと継続していきたいと思うが、人々は新しい旅行先を見つけるかもしれない」とエアライン・ウィクリーに語っている。
※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。英語記事が公開された2021年5月17日時点に基づいた内容となります。
オリジナル記事:U.S. Airlines Brace for Another Lost Summer for Transatlantic Travel
著者:Edward Russell氏