世界旅行ツーリズム協会(WTTC)がこのほどまとめた2020年の旅行・観光産業の経済・雇用レポートによると、世界全体でのGDP(国内総生産)貢献額は前年より4兆5000億ドル(約490兆5000億円)減少し、雇用は約2割減だった。
同レポートはWTTCがオクスフォード・エコノミクスの協力を得て作成しており、調査対象は世界185カ国・25地域。
パンデミック以前、旅行・観光産業による雇用数は、間接的なものや、関連して発生したものを含めて3億3400万人で、世界の雇用全体の10.6%を占めていた。GDP貢献額は同10.4%を占め9兆2000億ドル(約1002兆8000億円)。
これに対し、2020年の旅行・観光産業規模は4兆7000億ドル(512兆3000億円)に縮小し、マイナス額は前年比4兆5000億ドル(約490兆5000億円)。GDPに占める比率も5.5%と、いずれも半減した。
雇用への打撃も大きく、2020年の旅行・観光産業における雇用機会は前年比18.5%減で、6200万人分が失われた。現在、各国政府などによる雇用継続策で支えられているところも多いため、今後の需要回復ペース次第では、さらに雇用状況が悪化する可能性も同レポートでは指摘している。
世界全体での海外訪問客による消費額合計は、2019年が1兆7000億ドル(185兆3000億円)だったのに対し、2020年は69.4%減と過去最悪のマイナス幅となった。国内旅行者による消費額は同45%減。
一方、2019~20年の旅行・観光産業によるGDP貢献額(ドル)と雇用(人)について、世界の各地域別に見ると、GDP額の減少率はカリブ海諸国が最大で前年比58.0%減、次いでアジア太平洋(53.7%減)、欧州(51.4%減)となった。減少した金額が最も大きかったのはアジア太平洋で1兆6450億ドル(約179兆3050億円)、次いで欧州(1兆1260億ドル・約122兆7340億ドル)、北米(9100億ドル・約99兆1900億円)。
雇用機会については、減少率が最も大きかったのはアフリカで前年比29.3%減、次いで北米(27.9%減)、カリブ海諸国(24.7%減)。消失した雇用数ではアジア太平洋が圧倒的に多く3410万人、次いでアフリカ(720万人)、北米(710万人)だった。
なお、国別データによると、日本の旅行・観光産業のGDP貢献額は、2019年実績で前年比1.6%増の39兆1818億円で、日本のGDP成長率0.9%を上回っていた。このうち海外客による消費額は5兆1313億円で、輸出額の5.3%を占めた。旅行・観光産業のGDP比率は7.0%、雇用合計に占める比率は8.0%。
※ドル円換算は1ドル109円でトラベルボイス編集部が算出