全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部が、コロナ禍の宿泊施設の状況をまとめた。旅行者からの問い合わせが最も多いのは食事対応で、個食や部屋食、食事時間の柔軟な対応を実施している施設が半数以上を占め、アフターコロナに向けて地域と連携したマイクロツーリズム強化による誘致を目指したいとの意向が強い。調査は2021年2~3月に全旅連加盟の宿泊施設を対象にオンラインで実施。270施設から回答を得た。
これによると、回答があった施設の74.8%は売上高が前年比40~100%減という非常に厳しい状況。ただ、「現在、新たな取り組みをしていない」はわずか4.4%にとどまり、すでに始めているのは「提供する食事の時間・内容に工夫」(56.7%)、「チェックイン・アウトの柔軟化」(29.6%)などと、密回避のための取り組みが目立っている。
一方、今後は、「地域の他施設と連携した集客やプラン開発」(44.4%)が必要と考える施設が多く、「体験型プランの開発、改変」(36.7%)、「ワーケーション・リモート向けプラン開発」(35.2%)など、新たな旅の様式やマイクロツーリズム推進を積極的に考えている様子もうかがえる。
コロナ禍による未曾有の危機のなか、現場はどういう状況なのか。
新型コロナ感染拡大以降、前向きになれた瞬間は「客足が戻り始めたとき」(70%)と、「お客様からの“ありがとう”」(69.3%)が並んだ。ただ、宿泊客への期待について、基本的な感染症対策以外では、「気に入った宿・施設への口コミ拡散や再訪」(49.6%)だけでなく、「旅行者への批判をやめてほしい」(48.9%)との苦悩も大きい。
最後に、厳しい環境のなかで、事業者に今後求められることについての問いには、「経営体質の改善、見直し」、「地域間の連携」がともに64.4%でトップ。また、全体回答施設のおよそ3割を占める50室以下かつ平均客室単価1万5000円以下の宿からは、「来てもらえるだけで充分、何も望まない」との声が多く、財務状況から投資には限界がある一方、「コロナ禍でいかに経費をかけず集客するか、従業員からアイデアを募り実行した」、「小さい旅館ならではの対応強化として、より個人客向けへのシフトチェンジへのいい機会ととらえて動いた」などと、既存リソースを活かした試行錯誤もうかがえた。