観光事業者のデジタル化について立ち遅れが指摘されて久しいが、コロナ禍の今、NECソリューションイノベータ(NES)が提供する「NECガイド予約支援」を導入する観光事業者が増加している。大手事業者だけでなく、特に目立つのが観光の最前線を支える地域の中小事業者の導入。そして、その新規ユーザーの多くが、いわばデジタル初心者だ。
なぜ、NESの予約支援ツールは地域観光事業者の支持を得ているのか。同サービスの特徴と、NESが地域観光事業者の支援に取り組む理由をまとめた。
初心者でも、導入後すぐにオンライン販売ができる設計
「NECガイド予約支援」は、観光事業者やDMOなどが提供する旅行商品の販売と管理の業務をデジタル化し、オンライン販売を容易に実現するクラウドサービス。ユーザーは旅行会社やDMO、観光施設、交通事業者、体験・アクティビティ事業者など幅広く、販売商品はガイドツアーにとどまらない。
一番の特徴は、デジタル初心者にもわかりやすい仕様と操作性だ。サービスを導入したユーザーが、すぐに売り出したい旅行商品の登録をしてオンライン販売を開始できる。
具体的な手順を見てみよう。管理画面は、迷いなくスムーズに作業を進められるよう、至極シンプル。旅行商品の登録は、トップページの「新規登録」の項目を選び、画面の表示に従って操作をするだけ。日本の旅行業法を遵守して商品販売をするために必要な表示が、標準装備されている。
商品タイトルから催行・実施の日時、価格、イメージ画像の設定など、表示通りに情報を登録すれば、オンライン上に商品を掲載する準備は完了。サイト上のレイアウトは自動で最適化され、商品を1つでも登録をすれば、新たな旅行販売サイトが誕生する。そのURLをリンクすれば、既存の自社サイトに商品販売の窓口を設けることができる。
すでに自社サイトを有する場合、そこに新たな機能を追加する開発には時間を要するケースが多い。「NECガイド予約支援」を活用することで、サイト開発の手間を省き、迅速にオンライン販売への第一歩を踏み出すことができるのだ。
この一連の作業は標準設定の登録画面で対応できるが、追加でクレジットカード決済の設定や項目変更等のカスタマイズも可能だ。NESでは導入前のヒアリングを重視しており、ユーザーの実務や課題に即した初期設定や業務フローの提案を、オプションで対応している。
オンライン販売の開始で起きた変化
「NECガイド予約支援」導入後、すぐにオンライン販売ができて、予約が入る。予約以外にも販売サイトでよく見られている商品やその流入経路など、アナログ販売では把握できない潜在需要もデータで見えるようになる。そんな手ごたえを繰り返すうちに、観光事業者がオンライン販売に対する自信がついて、積極的にオンライン販売を展開できるようになる。「NECガイド予約支援」を導入した事業者には、こうした好循環が生まれている。
北海道の阿寒バスはコロナで観光需要が激減した2020年、初めてバーチャルツアーを企画し、「NECガイド予約支援」でオンライン販売を開始。そのメリットを実感したことで、2021年には販売商品を拡充した。既存の定期観光バスや、路線バスなどを使ったツアーを新たに商品化し、販売した結果、2021年は大都市圏を中心に緊急事態宣言が長引いたなかでも、地域の観光需要を獲得できた。
熊本県の阿蘇火山博物館では2021年9月下旬から約1カ月間、週末に開催した「阿蘇ナイトミュージアム」のチケット販売で、「NECガイド予約支援」を導入。初めてのオンライン販売を開始してから3日間で1500枚を売り上げた。日にちと時間を指定して販売したので、来場者を分散させると同時に、時間ごとの来場者数を事前に把握。現地のチケット販売業務がパンクすることもなく、スムーズな運営ができたという。
オンライン販売をトータルでサポート、サイト検索されやすいようにSEO対策も
オンライン販売で大切なのは、インターネット上の膨大な情報のなかから、まずは発見してもらうこと。自社のサイトや商品が検索結果に表示されやすい状態で、オンライン上に存在することが重要だ。「NECガイド予約支援」では、SEO対策(インターネット検索結果に自社サイトや商品が表示されるための対策)も基本実装している。
そして、SEO対策については、旅行商品を登録するユーザー側も理解する必要がある。旅行者が検索するであろうキーワードを意識した商品登録をすれば、より効果が発揮されるからだ。
そのためNESでは、「NECガイド予約支援」内のSEO対策だけではなく、導入ユーザーに対するSEOの基礎知識の情報提供にも注力している。
SEO対策の概要をまとめた資料を作成して提供するほか、オプションで、ユーザーの理解度や地域の特性にあわせた研修会も実施する。場合によっては、「なぜ自社サイト(オウンドメディア)を持つことが必要か」など、ウェブマーケティングの基本から説明をするという。
中小観光事業者のデジタル化支援を重視する理由
なぜ日本を代表する大手ソリューション企業のNESが、そこまで地域観光事業者の立場に寄り添ったサービスを提供しているのか。NESのイノベーション推進本部の川村武人氏は、「我々も、以前の“待ち”のシステム開発の姿勢から“攻め”の価値提供型サービスへ、変革が求められている。だからこそ、変革を迫られている日本の観光事業者の大変さが理解できる」とその理由を明かす。
NESは社会価値を創造するサービス・カンパニーとして、地域活性化をミッションに、観光分野での課題解決や地域共創による事業展開を模索してきた。その取り組みの中で、中小事業者が多い地域観光組織が、大手と同じスピードでDXを進めるのは難しいと判断。「目標は大きく、スタートは小さく進める。観光事業者の小さな成功体験を繰り返し、共に地域DXに繋げる今の事業モデルに行き着いた」(川村氏)と説明する。
商品登録の画面と操作性は、多くのユーザーと会話をして意見を収集し、何度も改善を重ねている。重視するポイントは、デジタルに慣れていない方でも利用しやすいこと。操作マニュアルは、家電の取扱説明書のように、誰が見てもわかるような表現を意識した。「最終的に目指しているのは、地域の観光事業者が独り立ちしてデジタルを使いこなし、継続的に利益を上げ続けること」(川村氏)だという。
地域観光事業者の存在感が強まる時代に
「NECガイド予約支援」では、無償トライアルも用意。3カ月間、有償版と同じ機能を試しながら本導入を検討できるようにしたもので、無償トライアルから本導入に至る事業者も少なくない。本導入の料金は、初期導入費用は0円、月額利用料は売上の5%(最低利用料9900円)。その他、オプションサービスを用意している。
導入のハードルの低さと丁寧なサポートで、「NECガイド予約支援」を利用する事業者は増加してきた。なかには、観光客と地域住民の日常利用を期待する着物レンタル事業者や、現地ガイドのマッチングサービス事業を新たに開始した観光組織もある。また、前述の阿寒バスはバーチャルツアーで、申込者が自宅で道東の名産品を味わいながらツアーに参加する“地域体験×EC”を実施するなど、同サービスの利用の仕方も広がってきた。
川村氏は今後、地域の観光事業者は自社サイトでの商品販売で、チャンスが広がるとみている。キーワードは地域観光の“DtoC”(Direct to Consumer)。全体から見ればニッチだが、各地域の文化や自然を愛する強いファンがつく。川村氏は、「地域ならではの世界観を直接伝えられるのは、間違いなく地域に根差す中小の観光事業者。地域の勝ち筋はそこにある」と信じている。
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問合せ先:gias-support@nes.jp.nec.com
記事:トラベルボイス企画部