長野県飯田市、南信州観光公社、エアビーアンドビー(Airbnb Japan)の3者は、飯田市の持続可能な町づくりに向けたパートナーシップを締結した。今後、農家ステイの促進や空き家の活用を通じて、関係人口の創出を促進していくとともに、地域経済の活性化につなげていく。
飯田市の佐藤健氏市長は、発表会見で「今回の協定を通じて、飯田市での人と暮らしに出会う旅を促進し、『訪れたい』から『住みたい』と思ってもらえる取り組みを進めていきたい」と発言。関係人口の創出から最終的には移住定住につなげていきたい考えを示した。
飯田市は、2027年に開業予定のリニア中央新幹線の途中駅になる。開業すれば、東京から約45分、名古屋から約25分となり、アクセスが格段に向上することになるが、佐藤市長は「都会のコピーではなく、上質なローカルを目指す」と強調。農村を中心とした暮らしや文化を維持していくことで「住みたい理由を残していく」と話した。
パートナーシップでは、飯田市南部の天龍峡エリアでゲストの受け入れ体制を構築していく。具体的には、現地エアビーホストと連携し、地域コミュニティーの魅力を発信していくほか、飯田市空き家バンクと連携し、空き家の活用を進めていく。また、農家ホスト開拓することで、新たな経済機会を創出。さまざまなプレイヤーを巻き込むことで、地域経済の活性化を狙う。
さらに、3者のコミュニケーションチャネルを活用し、飯田市の魅力を発信してくほか、地域内の宿泊施設のオンライン化促進に向けた勉強会の機会も提供していく。このほか、地域交流イベントやセミナーなどを開催することで、地域コミュニティの育成を支援していく考えだ。
地域連携DMOの南信州観光公社は、教育旅行などへの体験プログラムの提供に力点を置いているが、同公社代表取締役の高橋充氏は「今回のパートナーシップを通じて、ポストコロナを見据えた新しい農泊を国内およびインバウンドのFITに向けて訴求していきたい」考えを示した。高橋氏によると、現在農泊を提供している農家は飯田市で100軒ほど、南信州では200軒ほどになるという。
Airbnb Japan代表取締役の田邊泰之氏は、「ゲストとホストが旅マエから旅アトにかけて接点を持てるようなインフラになる」と同社の役割を説明。既存の農泊施設をAirbnbのホストに登録してもらう働きがけを行うとともに、「ライトな農家ステイのホストを新たに開拓していきたい」考えを示した。
今回の提携は、同じ長野県内の長野県観光機構と辰野町に続くもの。田邊氏は「辰野町から飯田市まで、天竜川沿いの伊那谷エリアでのホストの連携も可能になるだろう」と期待を込める。同社としては、長野県の取り組みを事例として、今後は他の地域へも課題解決や関係人口の創出につながるパートナーシップを広げていきたい考え。また、同社事業の柱のひとつ「体験」についても、「ワーケーションや移住などにつながる日本独自の体験を造成したいきたい」意向を示した。