デジタル化が遅れているといわれる観光産業。特に観光の最前線で、旅行者にサービスを提供する中小のタビナカ事業者はその傾向が顕著だ。なぜ、中小の観光事業者のデジタル化が遅れているのか。デジタル化のメリットを享受するには、どうすればよいのか。
観光の中小事業者に着目した調査資料が少ない中、トラベルボイスは、NECソリューションイノベータ(NES)と共同で独自の調査レポート「観光分野のデジタル活用による変革(DX) 中小事業者の実態と成功事例 ~ゼロから始めたDXで、成功までに乗り越えた壁とは?~」を発表。日本の中小観光事業者のDXに関する実態と課題、観光事業者がDXできる分野の整理、障壁を乗り越えてDXを実現した中小観光事業者の導入の決断や取り組みをまとめた成功事例も掲載している。
調査の過程では、デジタル化が遅れる理由のひとつに「デジタル化は高額な費用が必要」という誤解があることがみえてきた。DXの成功事例では、その誤解を解くヒントも盛り込まれている。また、観光庁から事業者へのメッセージも掲載。今後の観光庁の取り組みや、中小観光事業者がDX推進に踏み出すための提言も必読だ。
トラベルボイス・NECソリューションイノベータ 共同レポート
「観光分野のデジタル活用による変革(DX) 中小事業者の実態と成功事例」
〔無料 PDFファイル 1.1MB〕
※NECソリューションイノベータ社のサイトに移動します
日本の中小事業者のIT活用の現状
技術大国の日本だが、デジタル競争力を示す世界ランキングでは27位。中小事業者のIT活用を業務別でみると「支払い・決済」の導入比率は約5割だ。接客などの現場対応ではIT活用が難しいといわれているが、外部と直接的に関わらないバックヤード業務(管理や事務業務など)でも導入比率は約3割にとどまっている。
立ちはだかるのは、自社の課題の解決策としてIT化を選ぶ「認知」とIT化を前提とした解決方法を選ぶ「評価」の2つの障壁。コスト負担のみならず、IT化の価値に対する認知が不足しているため、検討の早い段階から選択肢として抜け落ちている現状が明らかになった。
一方で、こうしたハードルを越えて、ITを活用した中小事業者の多くが、その効果を実感。リピーター獲得や顧客満足度向上、新規顧客開拓など、サービス品質やマーケティングにかかわる業務実感として「効果があった」とする事業者は6割にのぼった。彼らのIT導入を成功に導いた大きなポイントは、「目的の明確化」「リーダーシップ」「専任者」の3つがあげられる。
観光事業者特有の課題と成功事例
観光関連の中小事業者に限れば、ITを活用し、DXを実現するための阻害要因は大きく5つ。資金や専門知識などのリソースのほか、新たなテクノロジー採用や事業変革の必要性が大きなハードルになっている。特に需要の少なさや事業規模の小ささから、「必要性を感じていない」とし、実務上の課題を認知せず、「ITツールが自社の既存の課題を解決するか?」がわからない状態になっている。
こうした状況の中でも、コロナ禍を機に業務を見直し、デジタル化に取り組んだ観光事業者もいる。彼らへのインタビューの結果、この数年に急増した観光需要への対応で手いっぱいになり、観光事業をめぐるITツールの最新情報に触れる機会がなかった事業者が多かった。費用感も高額な端末を揃える必要のあった以前のままで、その誤解から長く検討をしていなかったという声もあった。
導入による成果は大きい。いち早くデジタル化を推進したある事業者は、導入の2年後には売り上げが倍増した。コロナ禍の中で導入を開始した事業者も、素早い対応でGoToトラベルキャンペーンにあわせた販売体制を整備したほか、コロナ後の販売拡大に向けた準備を進めている。デジタル化による最も大きな変化は、意識の変化。新たな武器を手に入れ、中小観光事業者ならではの強みを生かす意欲が増しているようだ。
コロナ禍で厳しい状況が続くが、デジタル化を検討する中小の観光事業者には追い風が吹いている。政府のデジタル化推進により、IT導入に活用できる各種補助金施策が行われている。
世界のデジタル化の取り組みや今後、中小事業者にデジタル化が必要な理由、デジタル化を阻む障壁と成功した事業者のポイントなどをまとめたレポートは、以下からダウンロードできる。
トラベルボイス・NECソリューションイノベータ 共同レポート
「観光分野のデジタル活用による変革(DX) 中小事業者の実態と成功事例」
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