観光産業は「不都合な真実」から脱却を、気候変動対策で求められるDMOの役割とマーケティング手法とは? 【外電コラム】

今年、イギリス・グラスゴーで開催されたCOP26は、この地球に必要な最後の目覚まし時計になったかもしれない。

何十年にもわたって警告が発せられ、地球への社会的影響を説明する科学的エビデンスが示されてきた。このCOP26で、多くの政治家、運動家、専門家たちはやっと、将来私たちが直面するであろう課題に取り組むために、拘束力のある行動に移れると思ったかもしれない。

多くの人がグラスゴーで示された政策ではまだ十分ではないと主張しているのも事実だが、多くの分野で世界的な合意が得られたことは一定の成果と評価できるだろう。それぞれの思惑と課題を抱える各国が、いくつかの基準と行動指針に合意できたのは、これまでのことを考えると上出来といえるかもしれない。

しかし、問題はこれからの実行力。今後数年間が非常に重要になる。

イギリスのTVプロデューサーで環境運動家でもあるデビッド・アッテンボロー氏は「地球に対して私たちがしてきたことにこれほど気を配ったことはなかった。その解決のために何か行動を起こす力は以前にはなかった」と話した。

気候変動対策において重要な旅行の役割

旅行・観光産業は、気候変動に対する取り組みで意義のある対策を取ってこなかったと主張する人も多い。この分野で取り組むべきことは、業界からではなく、旅行者側の要請に動かされている面があるようだ。旅行者の方が総合的に先を見ている。一方、企業は社会的責任として官僚的な環境対策を示しているだけで、何も行動を起こしていない。それこそが、旅行・観光産業の「不都合な真実」だ。

特に、民間企業であれ、国の資金による運営であれ、DMOの役割は重要だ。

DMOが実行すべき対応についてまとめた白書を出版した「マイルズ・パートナーシップ」の主任分析官であるクリス・アダムス氏は「DMOは、環境対策で主導的な役割を果たすことができる」と話している。

「観光のプロモーションだけでなく、DMOに必要なことは、官民の取り組みを融合させることで、実践的な提案を行い、具体的な行動を起こすこだ。DMOは、観光事業から集めた資金を気候変動対策に使うことができるはずだ」と付け加える。

マイルズ・パートナーシップは、持続可能なマーケティング、公共交通機関、インフラに関する分野などで、観光産業が実践すべき推奨事項をまとめている。

持続可能なマーケティング

DMOは今後、多頻度の旅行ではなく年一回の長期旅行など、持続可能な旅行スタイルのプロモーションに力を入れるべきだろう。また、持続可能なビジネスや低炭素戦略を中核とするビジネスを積極的に推進する必要がある。

旅行者への税負担も考えるべきだ。例えば、オフシーズンの旅行者は負担を軽くすることで、分散化を図ることも一案だろう。

さらに、ホテルや航空会社には、より責任のある旅行者に報奨を提供するような持続可能なロイヤルティ・プログラムの開発も求められるかもしれない。

アダムス氏は「世界的に、数千億ドルの税金や課徴金が旅行者から集めらている。この資金を観光振興に再利用するのか、特定税を新設するのか、持続可能性と再生観光に焦点を当てた評価に充当するのか。DMOは資金とリソースをソリューションとしてどのように活用できるか考えていくべきだろう」と主張してる。

持続可能な輸送とインフラ

公共交通機関を拡張することは、言うのは簡単だが、実現するのは難しい。鉄道、ライトレールなどの大量輸送システムの構築には多額の資金が必要で、完成には何年もかかる。

しかし、旅行分野でのデジタル化によって、消費者が他の輸送サービスを利用することも可能になる。例えば、電動自動車やスクーターの利用が現在大幅に増えている。そのような新しいサービスと公共交通機関とを統合することは、環境にやさしい輸送インフラを構築してくうえで重要なものになってくるだろう。DMOは、官民連携のもと、旅行での公共交通機関の利用を推奨していく必要がある。

マイルズ・パートナーシップの報告書では次のような文言が盛り込まれている。

「信頼できる行動計画を立て、気候変動対策に取り組む覚悟を示し、持続可能かつ再生可能な観光を見据えた具体的な取り組みを策定すべき。そして、その取り組みを長期計画あるいは持続可能な観光戦略のなかに落とし込み、進捗状況を評価できる具体的で実用的かつ測定可能な目標を設定する必要がある」。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:WHAT STEPS CAN TOURISM TAKE AFTER COP26?

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