日本旅行業協会(JATA)は2022年1月12日、新春記者会見を開催し、2021年12月に就任した会長の髙橋広行氏(JTB取締役会長)と副会長らが、就任挨拶と所信表明をおこなった。
髙橋氏は、「JATA会長としての最大の使命は、観光業の再生にある」と述べ、コロナ以前に戻すのではなく、ニューノーマルの時代にふさわしいツーリズムを形作る考えを表明。地球環境の変革を目指すGX(グリーン・トランスフォーメーション)、SDGsを軸とした持続可能な旅行の推進から、ワーケーション、農泊といった新しい旅のコンテンツ、DX対応まで「コロナ禍がもたらした様々なニーズに、いかに応えることができるか。旅行会社の真価が問われる」との認識を示した。
また、コロナ禍による環境変化を「収益性や生産性など、旅行業界の積年の課題である体質改善を図る契機にしたい」とも言及。新たに「旅行業再生委員会」を立ち上げ、「協調と共創」をテーマに、商品サービスの展開から後方の管理業務まで、業界全体で共有する仕組みの構築に向けた議論を進めていることを明かした。「これからは共に作って共に活用する時代。各社が多額の投資をして、同様のシステムを構築しても効率が悪い」とし、「業界全体で共有できれば、収益性・生産性を向上する余地は相当にある」とも述べた。
観光再開への要望
また、髙橋氏はJATAとして今後、感染症対策と経済活動の両立を念頭に、提言や各社との連携を推進する考えを示した。
国内旅行では感染状況の収束後、できる限り早期のGoTo再開を希望。2021年に観光庁が主導したワクチン検査パッケージの実証実験で、約8000人の旅行者のうち1人の感染者も出なかったことを紹介し、「ワクチン検査パッケージをベースに安全対策を徹底すれば、旅行は必ずしも感染拡大の直接的要因ではないことがデータで証明できた。この2年の知見・経験や、科学的な根拠に基づいた対応を強く望みたい」と訴えた。
また、海外旅行や訪日旅行の再開にあたっては「世界的な動きと連動した、バランスの取れた対応をお願いしていきたい」と話し、政府に対し、感染状況の落ち着いた国地域との部分的な往来再開からスタートすることを求めていく考えを示した。
すでにJATAでは、トラベルバブルでの往来再開を探るべく、2021年12月と2022年1月に、フランス、ハワイ、韓国への視察団を派遣する予定だった。オミクロン株の影響で延期としたが、これも適切な時期に実現させ、国際交流復活の突破口にしたい考え。「安心安全の仕組みを作り上げ、提言したい」と意欲を示した。
業界あげてコンプライアンス徹底へ
髙橋氏は、2021年に発覚した会員企業による雇用調整助成金やGoToトラベル事業の給付金の不正受給について遺憾の意を示し、業界全体でコンプライアンスの徹底とレベルアップを図り、再発防止に真摯に取り組む方針を示した。
現在、すべての会員企業に各社におけるコンプライアンスの仕組みや規範を把握するための実態調査を実施しており、仕組みのない企業に対して、JATAが標準のコンプライアンスコードを作成して提供することも検討している。また、不正の背景には経営者の認識不足の側面もあるとし、経営者への研修のほか、各社の従業員向けにもEラーニングを活用した研修・試験を実施する予定。