持続可能な航空燃料(SAF)の国産商用化に向け企業団体が発足、幹事社はANA・JAL・日揮など、2050年CO2排出ゼロ目指す

日揮ホールディングス、レボインターナショナル、ANA、JALの4社は共同で、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の国産商用化および普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」を設立した。航空業界での脱炭素化に向けて世界的にSAFの需要が高まるなか、日本でも原料調達、製造、供給まで国産SAFの安定的なサプライチェーンの構築が急務となっていることから、設立されたもの。

SAFは、従来の石油由来のジェット燃料と異なり、藻類や廃食油、一般ごみなどを原料とする代替燃料。現状、生産も、流通も、利用も極めて限定的だ。「ACT FOR SKY」の設立に携わった4社を幹事企業として、国産SAFに直接関与する「ACTメンバー」10社、国産SAFサプライチェーン構築に必要となる「SKYメンバー」2社の計16社がこの取り組みに参画する。

発表記者会見で、日揮ホールディングス会長兼CEOの佐藤雅之氏は「航空分野でのカーボンニュートラルに向けてSAFは切り札。商用化、普及・拡大に向けて『オールジャパン』で協調し、市民や企業の意識改革を通じて、行動変容を促していく」と話し、国産SAFのサプライチェーンの構築に向けて意気込みを示した。

現在のところ、SAFは全航空燃料供給量の1%未満に止まっている。世界の航空業界は2050年までに実質CO2排出ゼロを目指しているが、その途中段階として、ANAとJALは2030年までに10%(年間120~130万キロリットル)をSAFに置き換える目標を掲げている。

しかし、サプライチェーンの構築のほかにも課題は多い。単一の原料・製造手法ではSAFの需要量を賄うことができず、原料も廃食用油、バイオマス、微細藻類、廃棄物など多様で、現在の航空燃料製造とは異なるエネルギー分野に頼ることになる。

廃食用油でSAF製造に取り組むレボインターナショナル代表取締役の越川哲也氏も「自社で原料調達から製造までの一貫体制を築いてきたが、原料の安定的な調達と原料品質の安定化は一社では難しい」と明かしたうえで、課題解決に向けたACT FOR SKYでの取り組みに期待を示した。

(左から)日揮会長兼CEOの佐藤氏、レボインターナショナル代表取締役の越川氏、ANA社長の平子氏、JAL社長の赤坂氏

SAFの普及に向けては、ANAとJALは昨年10月に共同レポート「2050年航空輸送におけるCO2排出実質ゼロへ向けて」を策定した。ANA社長の平子裕志氏は「産業をまたいで、さまざまな企業でSAFの重要性について共感と賛同を得ることができた」と評価し、共同レポートがACT FOT SKYの設立につながったとの認識を示した。

また、平子氏は「島国の日本にとって、SAFは将来の航空国際競争力に直結する問題。経済安全保障の点でも重要な意味を持つ」との考えを示し、SAFの地産地消の必要性を強調した。一方で、SAFの価格は既存のケロシン燃料の3~4倍になり、今後も需給バランスによって、高騰する懸念があるとしたうえで、「国とも協力しながら、利用者が使いやすいインセンティブも考えていきたい」とした。

JAL社長の赤坂祐二氏は「SAFは夢のある話。SAFを基点に日本でも新しい循環型社会を作れるのではないか。また、森林保全など他の環境課題の解決にもつながる可能性がある。航空業界でも、全力でこの取り組みに貢献していきたい」と意欲を示した。

ACT FOR SKYでは、設立発表日の3月2日を「SAFの日」と命名。今後、参画企業を増やしていくほか、関連団体や自治体などの連携も模索していく考えだ。

ACT FOR SKYのメンバー企業は以下の通り。

ACTメンバー

IHI、出光興産、伊藤忠商事、ENEOS、コスモ石油、ANA、太陽石油、東洋エンジニアリング、日揮ホールディングス、JAL、丸紅、三井物産、三菱商事、レボインターナショナル

SKYメンバー

小田急電鉄、日清食品ホールディングス

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