ロシアによるウクライナ侵攻後、何千人ものロシア人旅行者がタイのビーチリゾートで足止めされている。世界各国による経済制裁によって、ロシアへのフライトが欠航になり、クレジットカードによる支払いもできない状況だからだ。AP通信が、その詳細を伝えている。
タイ国政府観光庁によると、現在のところプーケット、スラートターニー、クラビ、パタヤで約6500人のロシア人旅行者が立ち往生しているという。
パンデミック前、多くのロシア人旅行者を受け入れてきた東南アジアの国々にとっては、ウクライナ危機は回復に向けた足枷になると懸念されている。タイ公衆衛生省によると、今年2月のタイへの海外旅行者数は20万3970人で、そのうちロシア人旅行者は1万7599人。全体の8.6%を占める最大マーケットになっている。
現在、タイからロシアに帰国する場合には中東を経由する必要があり、ロシア人旅行者はその調整にも苦労しているようだ。また、ロシアの銀行が発行するクレジットカードが使用できないため、代わりの支払い方法を探す必要もある。
現地のロシア語通訳の話では、彼らの多くはまだ現金を持っており、中国の銀聯クレジットカードを持っている人は、それを使うことができるが、暗号通貨による支払いは認められていないという。
タイ政府は、彼らのために30日間のビザ延長を無料で提供。長期滞在を余儀なくされている人に対して、安い代替宿泊施設を仲介している。
ウクライナ危機は、明らかにタイの景気回復に水を差すものになる。タイ政府は、依然としてオミクロン株による感染者数が高止まりする中、海外旅行者に入国規制を緩和。今年後半には、すべての規制を撤廃できるのではと期待しているところだ。
しかし、タイ国政府観光庁のユタサック・スパソーン総裁は、バンコクポスト紙に対して、ウクライナ危機に伴う石油価格の上昇によって、今年の旅行者数と観光収入の見通しを見直す必要があるかもしれないと述べた。同庁では、2022年の観光収入を国内外合わせて1.28兆バーツ(約4.5兆円)と予想している。
※バーツ円換算は1バーツ3.5円でトラベルボイス編集部が算出