ユナイテッド航空、海外旅行の回復への戦略を国際線責任者に聞いてきた、日米路線の復便は日本の水際対策次第

ユナイテッド航空は今夏、海外旅行需要の回復を見据えて、日本/ミクロネシア路線を強化する。国際路線営業担当副社長のマセル・フークス氏が来日し、その戦略や太平洋路線を含めた今後の見通しを説明した。

ユナイテッド航空は、8月1日から名古屋/グアム線を週2便で再開し、8月4日からは福岡/グアム線を同じく週2便で再開する。使用機材はいずれもボーイング737‐800型(ビジネスクラス16席、エコノミークラス150席)。

さらに、8月1日からは成田/グアム線を1日3便(週21便)に増便。すでに7月1日から週3便で復便している大阪/グアム線を含め、今夏の日本/グアム線は計週28便となり、コロナ前の週52便の半分程度まで回復することになる。

フークス氏は「グアムは、安心して家族で楽しめる場所。日本の海外旅行再開にあたって、最初の目的地になるだろう」と話し、その潜在性に期待をかけた。また、グアム政府観光局(GVB)が現在展開している「Go Go! Guam」キャンペーンにも言及。「旅行会社も前向きにパッケージ商品を造成・販売している」として、需要の増加が見込めるとの手応えを示したほか、GVBが4ヶ所で提供している無料のPCR検査も、「日本人旅行者にとっては安心材料になる」との考えを示した。

ユナイテッド航空としては、グアムをハブ空港と位置付けていることから、日本/グアム間だけでなく、グアムを経由したパラオやサイパンへの送客にも期待を寄せる。

9月からサイパン線も

さらに、ユナイテッド航空は、グアム線の再開に続いて、今年9月1日から成田/サイパン線の直行便運航を週3便で開始。現在運航中のグアム/サイパン線を補完する(フークス氏)。

この路線は、スカイマークが2019年11月から定期便の運航を始めたが、コロナ禍の2020年8月に運休。現在も再開の目処は立っていない。ユナイテッド航空は、その空白となっている路線に進出。海外旅行市場の回復に合わせて、需要の開拓を進めていく。

同社日本・ミクロネシア地区営業担当支社長の高橋亨氏は、サイパンについて、「ダイビング、ゴルフ、自然などグアムとは異なる魅力がある。その独特の魅力を日本市場に訴求して、この路線を成功させたい」と意気込みを示した。また、フークス氏は「サイパンについては、メディアと旅行会社によるPRが必要」として、ユナイテッド航空としても需要喚起に向けた取り組みを強めていく方針を示した。

日本路線の戦略について説明するフークス氏太平洋路線は50%の回復、復便は日本の水際対策次第

一方、太平洋路線については、2022年夏期スケジュールで、成田/サンフランシスコ線、ニューアーク線、ロサンゼルス線、ヒューストン線、羽田/サンフランシスコ、シカゴ線を運航。8月1日時点で週39便となり、提供座席数はコロナ前の50%ほどに回復するという。

現在のところ、日米間の旅客需要は大幅な改善は見られないものの、貨物需要が引き続き旺盛なほか、スターアライアンスメンバーのANAとの協業によって、東南アジアから成田経由で米国に向かう需要の取り組みに成功しているという。

フークス氏は、今後の日米路線の復便について、日本の水際対策次第との考えを示し、「訪日外国人に求められているビザ取得、1日2万人の入国制限、パッケージツアー限定の訪日観光、日本入国時72時間前のPCR検査の規制が1日も早く解除されることを望む」と発言。そのうえで、オーストラリアなどを例に「ペントアップ需要(抑えられていた需要)は必ずある」と続けた。オーストラリアでは水際対策が解除されて以降、米国/オーストラリア線の予約が急増したという。今年10月からサンフランシスコ/ブリスベン線を週3便で新規就航するなど米豪間の需要増を見据えた路線展開を計画する。

コロナ禍でもアプリやSAFへの投資を拡大

このほか、フークス氏は「コロナ禍でもサービス、プロダクト、カーボンニュートラルなどへの投資を拡大してきた」と強調。米国の空港では「ポラリス・ラウンジ」を再開したほか、ニューアーク空港では新たに「ユナイテッドクラブ」をオープンした。

機材計画では、ボーイング787-9の客室改修を継続しており、今年中には日本発着の太平洋路線の機材すべてに「ユナイテッド・ポラリス」の新シート導入を完了する予定。また、グアム線で使用されるボーイング737-800については、座席をアップグレードし、全席にモニターを設置した。全体では、ボーイング737MAXを含めて最新機材の導入を進めることで、今年末までには総座席供給量は2019年比8%増加されるという。

カーボンニュートラルについては、持続可能な航空燃料(SAF)で先進的にな取り組みを続けており、今年5月にはフィンランドのエネルギー会社「ネステ(Neste)」と新たな購入契約を締結。今後3年間で、最大5250万ガロンを購入する。

カスタマー体験の向上に向けて同社アプリもアップグレード。新たにQRコードを活用した「エージェント・オンディマンド」という相談サービスを立ち上げた。フークス氏によると、サービス開始以来、相談件数は100万人を超えているという。また、接続便の出発時間を調整する「コネクション・セーバー」サービスも始めた。これは、AIで旅客の搭乗便の遅れを把握し、乗り遅れがないように乗り継ぎ便の出発を可能な範囲で調整するものだ。

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