観光産業の起爆剤として期待される日本政府の観光需要喚起策「全国旅行支援」が2022年10月11日に始まった。オンラインをはじめとする旅行会社も一斉に販売をスタート。各社とも事前予約した旅行者にも割引を適用できることをアナウンスしていたため、スタートと同時の売り切れ、早期受け付け終了もあった。
東京都をはじめ、一部自治体で開始や終了の時期が異なっていたことも混乱を招いたが、アフターコロナの国内旅行販売がロケットスタートを切ったことは確かだ。最大1人1泊1万1000円補助の支援は国内旅行市場をどう動かすのか。初日の動きを取材した。
アクセス殺到、サイトにつながらず
全国旅行支援、いわゆる全国旅行割は、全国を対象とした旅行代金の最大40%を割引するもの。割引上限は宿泊が1人1泊につき5000円、JRや航空機付きのパッケージツアーは1人1泊につき8000円が助成され、地域で利用できるクーポンも付与される。新型コロナウイルス感染状況の落ち着きとともに、県内、近隣ブロック内の枠を超え、全国で人が動くことが期待されている。今回は平日旅行に対する支援も手厚く、需要平準化を促す施策でもある。
こうして新たに始まった国内旅行需要促進キャンペーン。ところが、あまりにも大きい反響から、リクルートの「じゃらんnet」、ヤフーの「Yahoo!トラベル」など各社サイトはアクセス集中によってつながりにくい状況が発生し、ユーザーに時間を改めて再度アクセスすることを依頼した。旅行予約サイトで、こうしたことが起きるのは珍しいといっていいだろう。
一方、全国旅行支援には予算上限があるため、即日完売の地域も発生。「Yahoo!トラベル」と「一休.com」は、宮崎県、宮城県、岩手県、山形県、宮崎県、長崎県(11日22時段階)について、即日完売したため予約受付を停止したと発表した。「ゆこゆこ」は、事前予約ですでに予算上限に達し、受け付けを停止していたが10月11日時点で「準備が整った都道府県から『全国旅行支援』の販売を順次開始したい」としている。
全国旅行支援は、都道府県が、それぞれの条件や支援内容を決定するため、適用条件が都道府県ごとに異なる。旅行の発着地による条件のパターンが膨大となるため、OTA各社はシステム対応に苦慮したようだ。楽天トラベル、じゃらんnetなど各社サイトでは、ユーザーに「準備が整った都道府県から開始する」と案内し、対象の都道府県を随時更新している。
宿泊事業者で特徴的だったのは星野リゾート。全国旅行支援専用の予約サイトを開設し、10月25日から販売するという。
レジャー施設は「イベント割」、ディズニーも
観光客が訪れるレジャー施設では、ユニバーサルスタジオ・ジャパン(USJ)やムーミンバレーパーク、富士急ハイランド、レゴランドなどがイベント割に参画する。話題を呼んでいるのが、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが参画を表明したことだ。
全国旅行支援がスタートし、世間の注目が観光に集まる中、11日夕刻にオリエンタルランドがイベント割を活用したパークチケットの販売を発表。東京ディズニーランド、東京ディズニーシーを期間限定で2割引きで利用できる日付指定1日パスを10月12日14時から販売する。なお、県民割での「千葉とく旅キャンペーン」では、パーク内で地域限定クーポンを使用することができなかったが、今回の全国旅行支援ではディズニーランド、ディズニーシーの両パークの全店舗で使用可能とした。
富士急ハイランドは、イベント割での割引チケットの販売のほか、山梨県の全国旅行支援「やまなしグリーン・ゾーン旅割」も適用。高速バスとフリーパスがセットになった日帰りバスツアーなど、 旅行代金が最大40%割引となる商品を販売する。
観光産業にとって待ちに待った、政府による観光支援策のスタート。全国一斉での開始とはならず、仕組みの複雑さによる現場の混乱は否めないものの、観光が地域経済に貢献するカタチが目に見える好機としたい。