リゾート人材派遣や宿泊業界に特化した特定技能人材サービスを運営するダイブ社と、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部はこのほど、共同実施した宿泊施設の現状と人手不足に関するアンケート調査の結果と課題について、記者会見を開催した。
調査は、全旅連青年部に加盟する宿泊事業者のうち160名が回答(調査は10月11日からの全国旅行支援の開始が発表される前に実施)。これによると、全国旅行支援を契機とした客数の増加に、76%が「期待」を示したものの、15%は「不安を感じている」と回答した。
会見で、全旅連青年部部長の星永重氏は、全国旅行支援の開始について「喜ばしいことだが、こうした(需要喚起の)制度の開始時は、それによる変更への対応だけでかなりの業務時間を割くことになる」と説明した。
全旅連青年部労務委員会委員長の長谷川周栄氏も、「本当にありがたいこと」としたうえで、「(過去の需要喚起策の実施と停止で)コロナ禍に入ってずっと0(ゼロ)か100か。スタートしたらストップの繰り返しで、従業員がかなり疲弊している。人を集めながら運営する必要がある」と、人手不足の中で需要の急激な昇降に対応している宿泊施設の現状を赤裸々に語った。宿泊施設への調査でも「人手不足を感じている」という回答は約88%に上った。
ダイブ外国人人材サービスユニットのゼネラルマネージャー・菅沼基氏は、宿泊業界への就労希望が減少していることについて、労働人口の減少に加え、コロナの影響を指摘。「(サービス業の)不安定さのイメージもついている。弊社に登録している人材も、オフィスワーク希望が増えている」と、宿泊業の採用にもコロナ禍が大きな影響を与えている実態を明かした。
外国人材採用の課題、対策しなければ「選ばれなくなる」と警鐘も
この状況下で人材採用をした宿泊施設でも、外国人人材を採用したのは約36%にとどまり、外国人雇用が進んでいない現状も明らかになった。
2019年に開始された在留資格「特定技能制度」については、同調査で9割以上の事業者がある程度の認知をしていることが判明したものの、宿泊業における特定技能人材の雇用は2022年6月末現在で160人程度。これは、介護分野(1万411人)や農業分野(1万1469人)など全12の特定産業分野のなかで、圧倒的に少ない数値だ。
特定技能制度の雇用が進まない理由として、ダイブの菅沼氏は「制度の複雑さと、採用と雇用後に必要な支援」「他の在留資格でのグレーゾーンでの採用多発」を指摘。「外国人雇用は難しそうというイメージや、なんとなく不安というあいまいな理由で取り組んでいない事業者もある。もっと宿泊施設がチャレンジすることが大切。早めに取り組まないと外国人からも選ばれなくなる」(菅沼氏)と警鐘を鳴らした。
菅原氏によると、他の特定産業分野に比べ、宿泊業がネックになっているのは、賃金面。宿泊業は、12分野の中でも給与水準が低い。外国人技能者が募集要項で最初に見るのは給与だといい、「今後取り組むべきは、単価アップ。宿泊のクオリティを上げて単価を上げ、従業員に還元する形を業界全体でとるべき」と指摘した。
全旅連の星氏はこれに加え、宿泊業のなかでも特に旅館は外国人の認知が低く、就労先に選ぶハードルが高いと説明。特に「(勤務地となる宿泊施設の場所が)地方になるほど、外国人の方も1人で来日して働くハードルは高くなる。2人以上での雇用を考えながら進めなければならない」と話し、家族の帯同が可能な特定技能2号の宿泊業への早期適用にも期待を示した。