グーグルの旅行キーパーソンが語った新潮流、ビジネス+休暇の「ブレンデッド・トラベル」定着から、旅行者が求める情報まで、国際会議で聞いてきた

米アリゾナ州フェニックスで開催された「フォーカスライト・カンファレンス2022」のセッションに、グーグル・トラベル・マネージング・ディレクターのネルソン・ボイス氏が登壇。旅行市場におけるグーグルの役割や戦略について語った。

まず、ボイス氏は世界の旅行市場の現状について、「旅行に関する検索量から力強いペントアップ需要(一時的に購買行動を控えていた消費者の需要が、一気に回復すること)を感じている」と話す。グーグルの調査によると、米国、英国、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアのレジャー海外旅行者の38%が、「一生に一度の旅行」を計画していると回答。また、40%が次のレジャー旅行では過去2年よりも旅行にお金をかけると答えていることから、ボイス氏は「旅行の機運の高まりはまだ継続している」との考えを示した。今夏のグーグルの旅行検索は前年比で200%増になったという。

一方で世界的にはインフレリスクがあり、旅行のペントアップ需要が他の消費に移る可能性もある。ボイス氏は「グーグルは、フライト予約で購入に最適な時期を知らせるなど、コストを抑えられる情報を提供している」と話し、旅行需要を下支えする役割を強調した。また、パートナーに対しては、現在の経済状況から、「回復に向けては、データドリブンで機動的に動くことが重要」と付け加えた。

「ビジネス+休暇」は定着、体験の提供がカギ

また、旅行スタイルの変化についても言及。さまざまな調査で、旅行消費はモノからコトに移っていることが明らかになっているが、ボイス氏は「特にミレニアム世代やZ世代は、お金も持っていないが、彼らは体験の重要性を理解している」との認識を示したうえで、その例として「ブレンデッド・トラベル」を挙げた。

ブレンデッド・トラベルとは、レジャーとビジネス旅行(出張など)を組み合わせたもので、ブレジャー(出張の前後で休暇を組み合わせる旅行形態)も含む。

グーグルの調査によると、米国では、ビジネストラベラーの50%以上が過去1年間で少なくとも1回のレジャー旅行でブレンデッド・トラベルを経験しており、33%がブレンデッド・トラベルを検討していると回答。ボイス氏は「このスタイルは一時的なものではなく、ずっと続くと思う」と見通した。

そのうえで、グーグルの体験予約「Thing to do」について触れ、「ブレンデッド・トラベラーにとっても有益な情報になっている」と自信を示した。

さらに、ボイス氏は、ブレンデッド・トラベルの拡大は、ロイヤルティプログラムの重要性を高めると見る。大手ホテルチェーンでは、ロイヤルティプログラムを拡充し、顧客の囲い込みを強化しているが、「ブレンデッドトラベル向けのプロダクトやサービスを強化していくのではないか」との考えを示した。

グーグル・トラベル・マネージング・ディレクターのネルソン・ボイス氏

重要なのは自社データ、求められる個人への情報最適化

セッションでは、旅行のパーソナライゼーションについても議論。ボイス氏は、米国人の81%がどのようにデータが使われるのか気にしないと回答した一方、4人に3人が受け取るメッセージでもっとパーソナライズされた情報を求めているとの調査結果を紹介した。そのうえで、「情報の活用について透明性を高める必要があり、またユーザーがパーソナライゼーションを管理し、選択できるようにする必要がある」とコメント。マーケターに対しては、ファーストパーティデータ(自社で収集したデータ)とキュレーションを重視するべきと付け加えた。

このほか、話題はSNSなどでの動画や画像からの検索にも及んだ。

ボイス氏は「確かに若い世代では、映像に旅行のインスピレーションを頼る傾向は強まっていると思う」としたうえで、競争は激しいが、「YouTubeでも、旅行の素晴らしいさを伝えるストーリーをストリーミングしている。グーグルとしても、映像関連の検索機能を強化していく」考えを示した。

グーグルはさまざまな旅行関連のサービスを展開しているが、ボイス氏はその役割について、ユーザーがもっと旅行計画を簡単に行えるようにすることと、ビジネスパートナーに対しては価値を提供し、その業績アップを手助けすることの2つを挙げ、「グーグルは、信頼できるパートナーから信頼できる情報を集めたうえで、ユーザーが迅速にかつ簡単に予約できるようにする」と話した。

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