日本政府観光局(JNTO)は定例のメディアブリーフィングを開き、理事の中山理映子氏が2022年の訪日市場を振り返るとともに、2023年の見通しについて説明した。
2022年の訪日客数は2019年比88%減の383万人にとどまったものの、2022年10月11日に個人旅行の受け入れおよびビザ免除措置が再開されて以降、急回復。2019年同月比で10月が80%減、11月が61.7%減、12月は45.8%減の137万人となったことで、中山氏は「順調に回復している」と手応えを示した。
2022年12月の実績を市場別で見ると、韓国が2019年同月比で83.9%増と顕著な伸びを示した。2019年が日韓関係の悪化で落ち込んでいた影響があるが、2018年同月比でも67%まで回復した。中山氏は「戻りが早いのは韓国と見込んでいたため、期待通りの回復を見せている」と評価。最近になって、地方の航空路線で復便の動きも出ていることから、「韓国から直接地方へ入る需要に期待している」と続けた。
また、JNTOは、訪日客数と直行便数の関係を2019年と比較分析。それによると、2022年10月~12月にかけて、需給バランスが取れている市場はタイ、インドネシア、フランス。航空便の回復が先行している市場はシンガポール、マレーシア、フィリピン、英国、インド、カナダ、メキシコ。訪日客数の回復が先行している市場は韓国、香港、台湾、ベトナム、オーストラリア、米国、ドイツ、中東地域と位置付けた。
そのうえで、中山氏は「昨年の10月以降、各市場で急増した需要に対して徐々に復便が増えてきているが、便数の回復率がネックとなり、訪日客数の回復にキャップがかかっている懸念がある」と指摘。また、需給バランスが取れている市場と訪日客数の回復が先行している市場については、「さらなる復便の働きかけが必要」との考えも示した。
さらに、観光庁が発表した2022年10月~12月の訪日外国人消費額についても言及。訪日外国人1人当たりの支出額が2019年比24.6%増の21万2000円となったについて触れ、「物価高のなかでも訪日する人は経済力のある旅行者。消費額の増加はいい傾向」としながらも、今後については「これが続くのかどうか見ていく必要がある」と続けた。
全体的には「勢いはついているが、もう少し戻ってもいい感触」。最大市場だった中国の動向の見通しはまだ立っておらず、欧米などの長距離方面については、「現在は、次の旅先の候補に日本が入った段階。予約のリードタイムが長いため、今年の夏から来年にかけてさらに戻ってくるのではないか」との見通しを示した。
このほか、中山氏は、さまざまな調査結果から、2023年の国際観光のトレンドとして「サステナブルツーリズム」「自然の中での体験」「価値ある体験」「ワーケーション/ブレジャー」「メタバース」を挙げたうえで、「JNTOが進める3本柱と合致している」とコメント。その中で、アドベンチャツーリズムについては、今年9月に北海道でアドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)2023が開催されることから、「日本をアピールするいい機会。日本にとって重要な年になる」との認識を示した。
外国人観光案内所の再生にも注力
JNTO地域連携部次長の藤内大輔氏は、地方自治体や企業ととの取り組み事例を紹介。そのなかで、外国人観光案内所の状況について、コロナ禍で訪日客が減少したことで、人員削減や一時的閉所しているところが多いと説明し、JNTOとしては、認定観光案内所に向けた研修の参加を呼びかけるとともに、地域の観光地や観光施設の開閉所状況を調査し、最新情報を提供していく方針を示した。現在のところ、全国で1550カ所が認定観光案内所に指定されている。
また、昨年10月の本格的なインバウンド再開以降、認定案内所の多くで訪日客が増えたという。その対応のなかで、マスク着用や日本の感染予防策に関するクレームはほぼなかった一方、キャッシュレス決済や交通ダイヤに関する質問が多いことも明らかにした。