三井住友カードと日本総合研究所はこのほど、三井住友カードが保有するキャッシュレスデータをもとに、訪日外国人の消費動向について分析したレポートを発表した。クレジットカードの決済データをもとに、支出内容や行動特性などを勘案して、インバウンド関連決済を抽出したもの。
これによると、2021年の東京五輪や2022年10月の水際対策緩和など、イベント発生時ごとに訪日外国人の決済額、決済件数は変化している。特に、水際対策緩和後に急回復し、12月末まで右肩上がりで増加し続けていた。
ただ、地域別ではインバウンド決済額の回復状況に差も。関東・中部・東京などはコロナ前を上回る水準まで戻ったが、中国人観光客への依存度が高かった近畿などの回復に遅れが見られた。実際、大阪府のインバウンド決済額は、図のように回復の早い韓国人観光客は増えたが、中国人が大幅に落ち込んで足を引っ張っている。
業種別でも回復度合いの違いが見られた。服飾小物、外食、衣服、テーマパークがコロナ前を上回ったのに対し、中国人観光客の戻りが遅いことから、百貨店、家電といった高額商品の回復が大きく遅れている。
また、1カードあたりのインバウンド決済額をみると、コロナ前に比べて全体的に上振れしている。2022年来の円安によって外国人の対円購買力が向上したほか、3年ぶりの訪日旅行に伴うリベンジ効果が現れている可能性が考えられるという。
訪日外国人消費額の今後について、三井住友カードと日本総合研究所は中国人観光客の戻り方に大きく左右されると指摘。インバウンド需要を安定した地域経済活性化につなげるためには、「国籍の多様化・分散化に取り組む必要があり、円安効果などによる支出意欲の高まりを観光産業振興に役立てることも重要」などと分析した。支出単価の増加分を賃上げ原資やデジタル化投資に活用し、観光産業で深刻化する人手不足対策につなげることも一案だと提案している。
なお、キャッシュレスデータの集計には、三井住友カードの分析支援サービス「Custella(カステラ)」の2023年1月10日までのデータを活用した。