日本のDX最新動向、デジタル化進む一方で「価値創出・変革」に後れ、企業内のリーダー不足も指摘、情報処理推進機構が白書

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)はこのほど、日米企業におけるDXの最新動向を比較して解説する「DX白書2023」を公開した。戦略、人材、技術の面から現状や課題などを包括的に調査したもの。日本企業はデジタル化が進み始めている一方、顧客価値創出やビジネスモデルの変革といったトランスフォーメーションが米国に比べ遅れを取っているなどと分析している。アンケートは2022年6、7月に経営層やICT、DX関連部門担当者などを対象に実施し、日本企業543社、米国企業386社から回答を得た。

トランスフォーメーションの成果に遅れ

これによると、2022年度の戦略面でDXに取り組んでいる日本企業は69.3%となり、2021年度に比べ13.5%増加した。ただ、全社戦略に基づいて取り組んでいる割合は日米で13.9%の開きが見られた。DXによる取り組みの成果の有無をみると、日本では「成果が出ている」とする企業が2021年度の49.5%から58%に増加したが、米国の89%に比べ大きな差がある。

さらに、取り組み内容に対する成果を調べたところ、「アナログ・物理データのデジタル化」、「業務の効率化による生産性の向上」について成果が出ていると回答した企業が日米ともに80%前後で差が小さい一方、「新規製品・サービスの創出」や「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの抜本的な変革」といったトランスフォーメーションのレベルでは日本が20%台に対し米国は60%以上と大きな差がついている。

IPA発表資料より

IT人材像の明確化を

また、IT分野に見識がある役員の割合は、3割以上いると答えた企業は日本が27.8%、米国が60.9%と、2倍以上の差があった。IPAは「DXの推進には、経営のリーダーシップが不可欠であるため、日本でも経営層のITに対する理解度を高めていくことが求められる」と指摘している。

DXを推進する人材の量が「充足している」と回答した企業は、日本で10.9%、米国で73.4%と顕著な差。日本では「大幅に不足している」が2021年度の30.6%から49.6%へと大幅に増加した。また、DXを推進する人材像の設定状況に関しては、人材像を「設定し、社内に周知している」企業の割合は日本が18.4%、米国が48.2%だった。IPAは「人材の獲得・確保を進める上では漠然と人材の獲得・育成に取組むのではなく、まず自社にとって必要な人材を明確化することが重要となる」と提言している。

IPA発表資料より

日本はまだデータ利活用の基礎段階

また、データの利活用は日本が米国よりも進んでいるものの、データ利活用による「売上増加」効果については、「接客サービス」「コールセンター」など7領域全てにおいて米国では60~80%の企業が成果ありと回答したのに対し、日本では10~30%と総じて低い結果。「成果を測定していない」割合が日本では50%前後であり、日本企業はまだデータ利活用の基礎段階であることも浮き彫りになった。成果を測定し、改善・成果創出につなげていくことも喫緊の課題となっているようだ。

IPA発表資料より

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