観光庁は2023年3月8日、交通政策審議会観光分科会の第46回会合を開催し、「観光立国推進基本計画」の計画案をまとめた。有識者会議では大筋で合意し、3月末に閣議決定する。6年ぶりの改訂となり、「持続可能な観光地域づくり」「消費額拡大」「地方誘客促進」の3キーワードを掲げ、大阪・関西万博が開催される2025年をめどにインバウンド回復、国内交流拡大に集中的に取り組む。
新計画は、オーバーツーリズムからの脱却や地方誘客促進、高付加価値旅行による消費額拡大がポイント。参加した委員からは「これまでのボリューム、価格追求からのマインドセットに賛同する」「日本人は休むことへの罪悪感が強く、働く世代が旅行する環境を整えることに期待したい」といった好意的な意見が大半を占めた一方、「アウトバウンドへの注力も望みたい」との声も上がった。
従来の分科会での検討どおり、観光立国の基本的方針には、持続可能な観光SDGs、観光DXの推進を掲げた。持続可能な観光SDGsでは、2020年に策定した「日本版持続可能な観光ガイドライン」(JSTS-D)を活用して地方とともにサステナブルツーリズムを主軸とした観光振興を推進。観光DXでは、事業者間・地域間でのデータ連携の強化によって、広域での収益最大化を目指す。
また、目標については、従来のオーバーツーリズムからの脱却を目指し、人数に依存しない指標を中心に設定。2025年までに観光DXなど地域一体となって持続可能な観光コンテンツづくりに取り組む地域100地域にするほか、インバウンドの人数は2025年までに2019年超え、1人あたりの消費額を2019年の15.9万円から25%増の20万円を目指すとした。アドベンチャートラベルをはじめとした地方誘客も促進し、1人あたりの地方宿泊日数を2019年の1.3泊から1.5泊に引き上げたい考えだ。国内旅行人数は2019年比で5%増の3.2億人、消費額22兆円を目指す。
なお、岸田文雄首相は2019年に過去最多の4.8兆円を記録した訪日客消費額を、今年度までに5兆円に引き上げると提唱している。