ニュージーランド最大のBtoB旅行商談会「トレンツ(TRENZ) 2023」が2023年5月8日~11日の4日間、南島のクライストチャーチで開催された。1994年から毎年開催されてきた同イベントは、パンデミックによる4年間の中断を経て、クライストチャーチに2022年新たに開業した施設「Te Pae(テ・パエ)」で4年ぶりの開催となった。
イベントには、ニュージーランドから300を超えるセラーと、世界25市場からのバイヤーのほか、ニュージーランド国内や世界各国のメディアが参加し、活発な商談がおこなわれた。
ニュージーランド観光大臣のホン・ピーニ・へナレ氏は、「観光はニュージーランドの国全体のサステナビリティ推進に大きく貢献するセクター。全国の観光事業者が一堂に会し、その取り組みを世界に向けて発信できる機会は、同国の観光回復への非常に大きなステップ」と今回の開催を高く評価した。
また、主催者のニュージーランドの観光産業団体であるツーリズム・インダストリー・アオテロア(TIA)チーフ・エグゼクティブのレベッカ・イングラム氏は、「トレンツの開催は、観光業界だけでなく、観光客を受け入れるコミュニティ、観光産業で働く人々の家族、ひいてはニュージーランド経済全体にとって大きな意味をもつ。今回の開催が、力強い観光産業の未来への第一歩となることを確信している」と4年ぶりの開催に喜びを表した。
ニュージーランド観光の復活までの道のりと現在地
パンデミック以前まで、ニュージーランドの観光産業は、年間約40憶ドルの外貨収入をもたらし、国の雇用全体の8.4%を占める、ニュージーランド最大の輸出産業のひとつだった。パンデミックでいったん国際観光はゼロとなったものの、国境再開後は抑制された需要が一気に回復し、2023年1月現在、レジャー目的のニュージーランドへの国際渡航者数は2019年比57%まで回復。一方で今年に入って渡航者数は頭打ちになっていることから、TIAのイングラム氏は「国際的に旅行者誘致の競争が高まるなか、選ばれるデスティネーションであり続けるためにはさらなる努力が必要」との考えを明らかにした。
観光業界の課題である人材不足については、TIAがおこなった最新の調査によると、現在も従業員を採用・育成中と回答した事業者は56%で、2022年の75%より改善。イングラム氏は「多くの事業者は、リソースに合わせたサービスの再構築へ舵を切り、上質な観光体験とカスタマーサービスを届ける準備が整っている」と強調した。
次世代の観光「再生型観光」へ
ニュージーランド政府観光局 最高責任者のレネ・ド・モンチー氏は、「これからの観光は、ニュージーランドの人々と社会のウェルビーイングに貢献するものでなければならない」と強調。今後は「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」をテーマに掲げ、ニュージーランドの文化や自然に深く関心を持ち、本物の体験を求める「ハイクオリティ・ビジター」の誘致に力を入れていく方針を示した。
TIAのイングラム氏は「国の法整備から、コミュニティ主導のデスティネーション・マネジメント・プランの実行、各事業者レベルの取り組みまで、ニュージーランドの観光は次のレベルに向けて今まさに変化している」と述べた。
クライストチャーチでのトレンツの開催は、前回の2006年以来17年ぶりとなる。クライストチャーチの持続可能な経済発展を推進するChristchurchNZ チーフ・エグゼクティブのアリ・アダムス氏は、「クライストチャーチはこの10年間、2011年の大地震からの復興をとおして、新たなアイデンティティを築いてきた。クライストチャーチは、人と自然が調和して存在し、遊びのための時間と空間がある『バランス』の街。多くの魅力と十分なインフラがあり、旅行者を迎える用意ができている」と、旅行者に向けて歓迎のメッセージを発信した。