ニュージーランドの旅行商談会「トレンツ(TRENZ) 2023」が、2023年5月にクライストチャーチで開催された。300を超えるセラーと世界25市場からのバイヤーが参加し、4年ぶりに現地での活発な商談がおこなわれ、ニュージーランド観光の本格再開を印象付けるイベントとなった。
パンデミック以前まで、観光はGDPの5%、輸出の20%を占めるニュージーランド最大の輸出産業だった。2020年以降、国際観光はほぼゼロになったが、2022年5月の国境再開後は、主に航空路線が回復したオーストラリア・北米市場から旅行者が戻り、2023年1月時点でレジャー目的の外国人旅行者数は2019年比57%まで回復。
一方、その後、旅行者数が頭打ちとなっている現状を受け、ツーリズム・インダストリー・アオテロア(TIA)チーフ・エグゼクティブのレベッカ・イングラム氏は「旅行者の誘致競争はますます厳しくなっており、選ばれるデスティネーションであり続けるためには、これまで以上に努力が必要」と発言。今後はアジア市場を含めたグローバルの旅行者誘致に力を入れていく方針を示した。
ハイクオリティ旅行者の誘致にフォーカス
ニュージーランド政府観光局 最高責任者のレネ・ド・モンチー氏は、「これからの観光は、ニュージーランドの人々と地域コミュニティのウェルビーイングに貢献するものであるべき」と強調したうえで、「ニュージーランドの価値を理解してくれるハイクオリティ旅行者(ビジター)の誘致に力を入れることで、文化・自然の保護と経済の両面から、長期的な目線でニュージーランドに貢献していく」と今後の方針を語った。
今後、注力していく「ハイクオリティ・ビジター」について、モンチー氏は「消費額の大きさだけでなく、ニュージーランドの文化を尊重し、積極的に様々な体験をし、異なる季節にニュージーランドを再訪してくれる旅行者」と説明。2022年8月に開始したグローバルキャンペーン「If You Seek(好奇心を解放しよう)」を通してターゲットに訴求していくことで、2030年までにすべての旅行者が「ハイクオリティ・ビジター」となることを目指すという。
ニュージーランド政府観光局がおこなった最新の調査結果では、旅行者がニュージーランドに対して抱くイメージとして「日常から解放され、リラックス・リフレッシュできる場所」が上位にあること、またパンデミックを経て旅行者がより「サステナブルな旅」「意味を持つ旅(Meaningful travel)」を重視する傾向が強まっていることに言及し、「このような性質をもつ旅行者は我々が求めるハイクオリティ・ビジター。ニュージーランドは彼らのニーズに応えることのできる場所」であると改めて訴えた。
また日本市場について、「非英語圏で初めてとなるニュージーランド政府観光局の海外オフィスが1973年に日本に開設して以来、長期にわたり関係を築いてきた重要なマーケット。日本の旅行者はサステナブルな旅行に関心が高い傾向があり、まさにニュージーランドがターゲットとするハイクオリティ・ビジター」と評価した。
ニュージーランドでは、2018年に「未来の世代まで美しいニュージーランドを守っていく」ための宣言である「ティアキ・プロミス」を制定。ニュージーランドを訪れる旅行者に「大地・海・自然に敬意を払い足跡を残さないこと」「周囲に配慮し安全に旅行すること」「文化を尊重しオープンな心で旅をすること」の3つの心がけを呼びかけている。「ティアキ」は先住民マオリの言葉で「環境や人々を守る」という意味をもち、旅行者が「ティアキ・プロミス」を守ることで、大地と深くつながるマオリの視点からニュージーランドに触れ、自身の行動のインパクトを認識できることを目的としている。
「ティアキ・プロミス」は、ニュージーランドの7企業・団体が協働で推進。そのひとつであるニュージーランド航空は、国際線の機内で「ティアキ・プロミス」に基づいたビデオを放映し、ニュージーランドを訪れる旅行者に心構えを促している。
国際観光の再開支える航空路線
国際観光の本格再開を支えるニュージーランド航空も、需要回復を見据え準備を進めている。2023年11月30日から2024年3月31日までは、成田/オークランド線で、現在のデイリー運航に加えて週3便の増便を発表。週10便の運航で、南半球の夏にあたるハイシーズンの供給を支える。
また同社では、より快適な旅をサポートするためのサービスも拡充。エコノミー・シート3席分をつなげて使用できる「スカイカウチ」は、ゆったりと足を伸ばせるフラットな空間が確保でき、子連れ旅行や、機内で快適な睡眠を確保したい旅行者などに好評だ。また、2024年9月には、エコノミークラスの乗客が利用できるカプセル型の3段ベッド「スカイネスト」が北米路線で導入予定。事前に予約・購入することで一定時間利用ができるという。