旅行テックの新潮流、交通ライドシェアからタビナカ体験、地域マネジメントまで、観光×デジタルのスタートアップ企業を取材した ー WiT Japan 2023

完全リアルでの開催としては4年ぶりとなった「WiT Japan & North Asia 2023」では、旅行スタートアップ・ショーケースもおこなわれた。今回は、2日間に渡り12社が登壇。それぞれ、観光・旅行分野における課題解決に取り組む事業を発表した。その事業内容は、交通、インバウンド、地域マネージメント、飲食店予約、旅行予約、周遊パスなど幅広く、いずれもAIをはじめとするテクノロジーを最大限活用したもの。パンデミックを経て業績を伸ばしている。登壇したスタートアップから、5社をピックアップして紹介する。

Kotozna: 多言語AIで宿泊施設スタッフをサポート

Kotozna(コトツナ)は、宿泊施設向けに多言語AIゲストエクスペリエンス・プラットフォームを提供している。同社COOのサム・ジョージ氏は「コロナ後、日本のホテルもスタッフ不足に苦しんでいる。その中でインバウンドも戻ってきており、言語の壁が再び課題として浮かび上がっている」と宿泊施設側の現状を説明。一方、宿泊客側は、セルフサービスを好む傾向も強くなっているという。

その両側のニーズに応えるソリューションとして、宿泊事業者向け情報発信・コミュニケーションツール「Kotozna in-room」を開発した。宿泊客は部屋に設置されたQRコードを読み取ると、施設と自国語でのコミュニケーションが可能になる。施設側は、既存のタプレットなどで、日本語に翻訳された問い合わせに対応。返信は、再度、宿泊客の言語に翻訳される。現在109言語に対応しているという。

また、24時間365日利用可能な多言語AIコンシェルジュ「Kotozna ConcierGPT」も開発した。チャットGPTをベースに宿泊客からの問い合わせに対応する。現在、主要言語に対応。1週間以内の導入が可能だという。「会話からゲストの洞察を生成して、ホテルのサービス向上に役立てることができる」とジョージ氏。宿泊施設を中心とした旅程の作成・推奨も可能だという。

事業を説明するKotoznaのジョージ氏Liigo: Googleマップのデータ活用で地域観光DX支援

Liigo(リーゴ)は、日本国内の観光事業者のDXを支援するソリューションを提供している。CEOの宮本秀範氏は「観光マーケティングにおけるデジタルの割合は極めて低く、それが利益率の低さに関係している」と話し、同社の地域マーケティングを可視化し、データ連携の仕組みを構築する取り組みを説明した。

その特徴は、旅行中に多く利用されているGoogleマップのデータを活用すること。そのデータを管理するツール「Googleビジネスプロフィール」の活用支援を、DMOや自治体向けに提供し、観光地全体の分析サポートをおこなっている。

さらに、Googleマップのデータに基づき、「エリアコンパス」と呼ばれる連携プラットフォームを構築した。これにより、地域の集客状況を見える化。ダッシュボードでわかりやすく状況を可視化するほか、AIが地域の施設データを読み込み、集客に向けた次のアクションを自動的にリコメンドする。このほか、地域の関係者間でのコミュニケーション機能も備えることで、データに基づいた連携を支援している。

Liigoの宮本氏NearMe: テクノロジー活用でタクシー相乗り

NearMeは、社会的なモビリティ問題を解決するライドシェアリング・プラットフォーム。タクシーの効率的な相乗りをテクノロジーで可能とすることで、移動における社会課題の解決を目指している。まずは空港の送迎から事業を始めた。同社CEOの高原幸一郎氏は「タクシーとバスの中間のようなもの。タクシーよりもリーズナブルで、バスよりも柔軟」とその特徴を説明する。

NearMeによると、全国のタクシー台数は20万台強だが、そのの実車率は50%ほど。1台あたりの平均実車人数は1.3人。高原氏は「テクノロジーを利用して、この遊休資産を活用できれば、大きな可能性がある」と強調した。

一方、タクシー事業者にとっては、事前予約サービスが中心となるため安定的な収益を確保することが可能。運行ルートはAIが作成することで、運行管理の負担も少ないという。また、1台でシェアするため、渋滞緩和やエネルギー節約にもつながるとしている。

同社では空港送迎の「スマートシャトル」の市場規模は10億ドルほどと試算。現在、14空港で利用可能だが、これをさらに拡大していく考え。また、空港送迎でなく、地域内移動など日常での利用を拡大していけば、市場規模は200億ドルほどになるという。

NearMeの高原氏TripGuru: 環境にも配慮したタビナカ体験

香港ベースのTripGuruは、タイ、バリ島、ベトナムなど東南アジアを中心としたタビナカ体験オペレーター。最近では日本市場にも参入した。特徴は、ツアーガイド、ドライバーなど現地の人材を活用し、より深い現地体験を提供していること。現地への貢献は、サステナブルツーリズムの取り組みにも現れており、同社CEOのセバスチャン・レンザアッチ氏によると、バンコクとチェンマイでは毎月クレジットを購入して二酸化炭素排出量を相殺。月に2万本使用していたペットボトルをすべてガラスボトルに交換したという。

また、レンザアッチ氏は少人数グループでのツアー催行も特徴として挙げた。24時間 365日の サポートとアプリも提供。このことから、参加者の満足度もリピート率も高いという。

タビナカ市場は、個人事業者が多く、細分化されているためオンライン化が難しいとされているが、API連携によって大手OTAとの連携を可能に。現在、ゲットユアガイド、クルック、エクスペディア、ブッキング・ドットコム、トリップアドバイザー、トラベロカ、エアビーアンドビーなどと連携している。

コロナ禍では収益がゼロになったものの、現在のユーザーはパンデミック前のレベルの4倍に達し、年20万人を超えるゲストを迎えているという。

TripGuruのレンザアッチ氏

Fontrip Technology: 自分好みのアトラクションを選択できるパス

台湾のFontrip Technologyは、観光事業者のeチケットシステムを構築。様々なサプライヤーの入場券をeチケット化し、パートナーOTAを通じて販売する。2022年の販売実績は570万枚にのぼる。

同社の特徴は、交通機関と人気アトラクションのチケットをまとめた「FUN PASS」。FUN PASSに参加する人気の観光地、食、ショッピングなどを自分の好みに合わせて選び、QRコードを使って、チケットなどと引き換える。

「台北FUN PASS」は2018年と2019年で合わせて6万枚以上を販売した。2022年12月には沖縄でも「FUN PASS」の販売を開始。2023年現在までで5000枚以上を販売した。利用者の多くが台湾へのインバウンド旅行者だという。同社インターナショナル・プロダクト・デイレクターのユーウェイ・チャン氏は「今後の目標は、2025年までに16都市に事業を拡大すること」と意欲を示した。

このほか、サプライヤー向けに「データマーケティング」を実施し、AIによる「予測マーケティング」をおこなうサービスも展開。SEO、正確なキーワード、ビッグデータ分析から、ウェブサイトのユーザビリティを高め、トラフィック拡大を支援している。

Fontrip Technologyのチャン氏

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