グーグルは、タビナカ予約の覇者となるのか? 体験アクティビティ検索「Things to do」を世界40都市で分析してみた【外電】

グーグルが展開するタビナカ予約「Thing to do」に対する反応は、今のところ、「歓迎モード」と「警戒モード」に分かれている。だが旅行業の他の領域とは異なり、現地ツアーや体験アクティビティ分野においては、むしろグーグルがOTAの存在価値を高めることになりそうだ――。

グーグルは2021年9月、新しい広告プロダクト「Google Things to do」をローンチした。ここでは、各都市の代表的な観光名所を掲載すると同時に、入場券などを予約できる公式サイトやOTA各社も表示している。ページ上部に有料広告枠を設けてはいるものの、中心には、予約サイトのオーガニックな検索結果を表示。検索結果リストの最上位には、直営サイトが並び、続いてビアター、ゲットユアガイド、ミューズメントなど、オンライン仲介事業者の名前が並んでいる。

「Google Things to do」の画面(スキフトより引用)

そこで、観光産業ニュース「スキフト(skift)」は、直営サイトが検索結果のトップに表示される頻度や、OTAの掲載順位などを確かめてみようと、「Things to do」ツールのウェブ・スクレイピング分析を行った。まず世界主要地域から40都市ずつを選び、各都市の人気アトラクション20カ所について、それぞれの予約サイトとして表示される上位10件がどこかを調べた。

その結果は、以下のチャートにある通りだ。100%、つまりすべての結果で、観光アトラクションの直営サイトが最上位に。その下には、数えきれないほど多くのOTAの名前が表示されているが、4~5位までは、どの都市でもほぼ同じ顔ぶれとなり、Trip.com(トリップドットコム)、GetYourGuide(ゲットユアガイド)、Klook(クルック)、Tiqets(チケッツ)他となった。

また、欧州ならゲットユアガイド、アジアではトリップドットコムやクルックという具合に、地域ごとにトップは異なり、全地域で圧倒的な存在感を持つブランドは見当たらない。タビナカ事業の大手ブランドでさえ、掲載されていたのは、すべての観光名所の半分以下だった。現状では、予約チャネルは非常に細分化されたままだということが分かる。

OTAの掲載順(スキフト調査)

トップに表示されたのは常に直営サイトだったが、2~5番目に表示されるところはバラバラ。オーガニック検索からの予約を獲得しようと、多くの事業者が競争しているからだ。

グーグルでは、表示順位の決め方について、ウェブサイト上で非常に明確に説明している。「複数の要因をベースに表示順位が決まりますが、主な決め手はチケットの価格です。また、公式チケットであれば上位になります。グーグルに広告料を支払った事業者が検索結果に表示されたり、表示順位が上昇することはありません」。

トリップドットコムが頻繁に上位に表示される理由は、同サイトが割引チケット(利益を度外視した割引もいとわない)に力を入れており、競合他社より値下げしているからだろう。また、ブッキングドットコムやエクスペディアの名前が出てこないことも特筆すべき点だ。

地域別・表示順の分析(スキフト調査)

地域別・表示順の分析(スキフト調査)

地域別・表示順の分析(スキフト調査)

グーグルのタビナカ領域への参入については、歓迎と警戒、両方の反応が見られる。グーグル・ホテルなどこれまでの事例では、OTAより直接予約を優遇するのが同社の方針であり、ブッキングやエクスペディアなど大手OTAにとっては脅威だ。しかし、タビナカ市場においては、むしろグーグルがOTAの味方になりそうだと考えている。

なぜなら、現地ツアーや体験アクティビティは、どうしても非常に細分化された領域になってしまうので、強力なアグリゲーターが必要になるから。この分野では、直接予約という手法が、まだ未発達だ。

チケッツ社のロレンス・ルーリンクCEOに話を聞くと、「グーグルは、インターフェースの最適化にまだ非常に悩んでいると思う。世界中には、ありとあらゆる体験があり、それぞれのプロバイダーがいる。そのすべてと競争するのに、ユーザー・インターフェースが一つだけというのは非常に厳しい」。

グーグルのThings to doは動き出したばかりで、グーグル・ホテルやグーグル・フライトと同じ土俵で比べる段階にはない。とはいえ、タビナカ市場が非常に細分化されていることを考えれば、まずは有名な大型観光アトラクションを中心に進めていくことになるだろう。直接予約サイトだけでなく、複数のOTAでも予約を取り扱っているようなところだ。

一方、タビナカ事業者のほとんどは、独自のウェブサイトを持っておらず、予約テクノロジーのプロバイダーやOTAが主な集客チャネルとなっている。こうした中小事業者がグーグルの検索結果に表示されるためには、予約サイトなどの力を借りて、グーグルのシステムとつながる必要がある。

グーグルは、確かにオフラインからオンラインへの移行を支援している。だが、こうした状況が続けば、結果的にはオンライン仲介業者が予約シェアを拡大することになると私は予想している。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との正式な提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Google: Friend or Foe in the Tours and Activities Industry?

著:Pranavi Agarwal氏

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