観光庁は、米国、英国、スイス、フランス、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、シンガポールの8カ国のDMOについて調査を行い「世界的な観光地域づくり法人の評価基準(案)を作成するための海外先進事例調査報告書」として公表した。
この報告書は、海外におけるDMOの状況や世界的に評価されるDMOの観光地域づくりにおいて担うべきとされている役割、取組み内容やその水準の設定・評価方法などについて、世界的なDMOの形成に向けた6つの評価項目ごとに各国の現状についてまとめたもの。
観光庁では、DMOへの支援のあり方を見直し、成長意欲のあるDMOに対する課題解決・成長促進の支援に集中するとともに、目指すモデルとなるDMO(世界的なDMO)を早期に形成するための支援に注力していく。
日本のDMO分布は、米国やニュージーランドよリも高密度
各国のDMOの状況を見ると、日本は「地域」「地域連携」「広域連携」「国」の4階層で、フランスおよびオーストラリアと同じ。DMOの法的位置付けについては、国レベルについてはすべての調査対象国で根拠法が存在する。階層が下がるにつれて法的位置付けがない、または不明だった。また、制度的位置付けについては、タイを除いて一元的に把握・管理する仕組みはなかった。
国土面積1万平方キロあたりのDMOの分布密度は、日本が7.13であるのに対して、米国は0.41、ニュージーランドは1.15、イングランドが11.59。
階層ごとの役割分担については、大枠では、国レベルではインバウンド対象のマーケティングやプロモーション、データ収集・調査や下層DMOの支援、地方レベルでは海外・国内のマーケティングやプロモーション、地域レベルでは国内マーケティングや商品開発、観光案内などの着地整備を担当している。
KPIは多くの国で「旅行客数」や「観光消費/支出額」が指標
観光戦略(全体戦略)策定では、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、シンガポールのように国~地方・地域で一貫した観光戦略を策定している国と、独自に戦略を策定している国に分けられる。オーストラリアやニュージーランドについては、地方~地域レベルにおいても独自の戦略が策定されているが、国の戦略との整合性が図られているのが特徴だった。
KPIは多くの国で設定。具体的な中身については、「旅行客数」「観光消費/支出額」などマーケティングに関連する指標が主となっている。米国や英国、オーストラリアではインバウンドの旅行者数や消費(支出)額をKPIとして設定している。
また、米国、英国、スイスなどでは、ウェブアクセス数、SNSにおけるインプレッション数など「ウェブ/デジタル関係」の指標が設定されている事例ある。さらに、米国や英国では、マーケティングに関連したROI(Return on Investment:投資収益率)を指標として設定している。
このほか、地域への経済的波及効果とも関連した雇用者数や税収をKPIとして設定している事例は、米国のブランドUSA、ビジット・カリフォルニア、サンフランシスコ・トラベルに見られ、クイーンズランド州観光局では雇用者数が設定されていた。ハワイ州観光局では、住民満足度やDMOの認知度、クィーンズランド観光局は地域への誇りがKPIとされている。
一方、観光による受益を地域のできる限り多くの事業者・業種に波及させる戦略については、具体的に明示している国は見つからなかった。