金沢の地元ホテルが北陸周遊を、金沢ハブで仕掛ける理由を聞いてきた

金沢市で生コンクリート、土木建築、道路舗装などの事業を行う「髙田産業グループ」が、観光事業に乗り出しのは2015年のことだ。同年3月に工場跡地に「金沢 彩の庭ホテル」を開業。2018年には旅行会社「金沢アドベンチャーズ」を設立し、ラグジュアリー貸切バス「彩の風」の運行も始めた。金沢に、そして北陸に根差した観光事業の展開を目指している。同ホテル代表の髙田恒平氏に、その取り組みを聞いてきた。

金沢 彩の庭ホテルは、今年3月に開業10周年を迎えるにあたって、旅行会社とバス事業を合わせた観光事業を新たに「Hokuriku Destination Management Company(HDMC)」として位置付け、金沢に加えて、金沢を起点とした北陸周遊を提案していく。コンセプトは「魅力ある北陸を。」として、語尾に余白を残し、幅広い活動の可能性を表した。

金沢 彩の庭ホテルでは、これまでもホテル発あるいは金沢駅発で金沢や白川郷を巡るバスツアーを催行しているが、今後はさらに旅行会社事業とバス事業を持つ優位性を生かして、北陸を「売っていく」考えだ。

清潔感あふれる金沢彩の庭ホテルのロビー。

北陸新幹線の延伸で「北陸」が強いキーワードに

北陸新幹線の金沢/敦賀間が3月16日に開業する。同ホテル代表の髙田恒平氏は、富山、石川、福井が新幹線でつながることで「北陸という言葉が間違いなく強いキーワードになる」と話す。そのうえで「大切なことは、お互い協力し合って、足りないところを補い、観光としてのレベルを上げていくこと」と強調し、北陸のDMC(地域特化型の旅行会社/Destination Management Company)としての立ち位置を明確にする。

また、金沢の地元ホテルとして「金沢をハブとして、北陸を広域で周遊してもらう」構想を立てる。髙田氏は「単に宿泊だけでなく、体験も加えて、さまざまな事業者と協力し、地域を巻き込み、一緒にその地域全体の収益を高めていきたい」と意欲を示した。

地域内連携では、「ライバルであるホテル同士の連携もあり得るのでは」と髙田氏。例えば、金沢周遊バスツアーでは、金沢駅で下車後、駅前の「ハイアットセントリック金沢」でのランチも案内しているという。

彩の風バスは現在、27席のバスを15席に改装したラグジュアリーバス2台と11席のバス1台を所有。現行ツアーに加えて、さまざまな周遊バスツアーや貸切バスでの活用が可能だが、髙田氏は、課題はその情報提供や提案などのソフト面にあるという。「旅行者にどこまで寄り添えるかが一番大事」としたうえで、金沢 彩の庭ホテルのフロント機能やコンシェルジュ機能、ウェブサイトでの情報発信などを強化していく考えを示した。

ラグジュアリーバスのラッピングは加賀友禅。エバー航空とのコラボで能登半島地震復興支援

一方、同ホテルは、地域に根差したホテルとして、能登半島地震の被災地支援にも乗り出した。震災後は2次避難所として55人の高校生を受け入れてきたが、復旧から復興の段階に入り、観光による地域貢献を進めていく。

3月1日からはエバー航空と北陸日台民間相互交流会とコラボレーション企画を実施。エバー航空利用者向けに、金沢または白川郷を巡るバスツアーと宿泊セットプランで10%割引を行うほか、お得な宿泊のみのプランも用意する。この売上の一部は、日本赤十字社石川県支部が行う能登半島地震の災害救護活動に活用される。

また、館内に新たに土産物売り場を設置。北陸の商品を販売することで北陸をアピールするとともに、地震で甚大な損害を受けた能登の物産なども販売し、復興支援につなげる。この売上の一部も復興支援に寄付する予定だ。

髙田氏は「発災後、自分たちでできることは何かを考えた。第一弾は、被災者の受け入れ。それとは別に、金沢、そして石川の経済活動を進めていくことが大事」と話す。能登半島の復興には時間がかかると見られている。息の長い支援で観光が果す役割は大きい。

トラベルジャーナリスト山田友樹

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