消費者庁はこのほど、「キャンセル料に関する消費者の意識調査についての分析書」を公表した。消費者制度課が実施した調査の結果を、中央大学文学部教授の有賀敦紀氏が分析してまとめたもの。消費者がどのような場合にキャンセル料を支払うことに不満を感じるのか、あるいは感じないのかを調べた。
観光関連はキャンセルの割合が高い傾向
まず、過去1年間に事業者との契約でキャンセル料の発生する時期にキャンセルしたことがある全国20歳以上の男女を対象に、2023年7月16~26日に実施した調査。それによると、キャンセルした商品・サービスは「ホテル・旅館等の宿泊(30.6%)」の割合が最も高く、次いで「航空機(16.2%)」、「ツアー旅行(12.5%)」の順で、旅行・移動関係が他のサービス、趣味、売買・賃借などを圧倒した。
キャンセル料を支払った割合は全体で67.6%。旅行関連は「支払いを求められたが、支払わなかった」の割合は、他の美容院などに比べると低かった。宿泊、ツアー旅行、航空機のキャンセルの理由は、「自分自身の都合」「同伴者や家族の都合」の割合がいずれも6割を超えた。
キャンセル料を支払うことについて、不満に思った理由を聞いたところ、全体的に「キャンセル料が高額だったから/ 返金が一切またはほとんど無かったから」の割合が 47.3%と最も高く、次いで「キャンセル料を支払うこと自体が不満だから」(27.3%)、「キャンセル料に関する説明が無かった、説明がわかりにくかったから」(23.7%) の順となった。一方、キャンセル料の支払い不満に思わなかった理由は、「キャンセル料が発生する ことを知っていたから、説明を受けていたから」の割合が 64.0%と最も高く、「自分自身の都合によるキャンセルだったから」(45.1%)、「キャンセル料が妥当な金額だったから」(37.9%)が続いた。
なお、旅行、移動・交通関係に限ると、キャンセル料の金額が高いと、キャンセル料の支払いに対する不満が高まっている。ただ、普段キャンセル料のことを気にする程度が高いと、キャンセル料の支払いに対する消費者の不満が軽減されることもわかった。
契約時の自身の選択がポイントに
さらに、別の調査で航空券、ホテル、スポーツジムなどで消費者のキャンセル料に対する認識を尋ねた。早期申し込み割引の時期、ファミリー割引といった一定の条件のもとにキャンセル料の割合が高くなる商品などで、消費者側にキャンセル料の選択肢があるときのほうが、ないときよりも消費者がキャンセル料を気にする度合いが強くなっている。また、選択肢が同じでも、比較しやすいほうが比較しにくいときよりも気にする度合いが強くなる。
こうした結果から有賀氏は、「消費者はキャンセルしたときの金銭的・心理的コストを自身の選択に帰属することで、不満をある程度軽減することができる」などと分析。そのうえで不満を軽減するために外的に操作可能な要因として、キャンセル料についての情報提供の仕方、キャンセル料を操作した選択肢の設け方を適切にすることが、消費者のキャンセル料の支払いに対する不満を軽減するために有効だと指摘している。