日本旅行業協会、相次ぐ不正に再発防止策、コンプラ違反は除名も、談合防止で地区委員会を廃止

日本旅行業協会(JATA)は、コンプライアンスに関わる再発防止に向けた具体的な対策を取りまとめた。公務受託事業費の不正請求、雇用調整助成金の不正受給、関係各社による談合の疑いなど、旅行業界において不適切事案が相次いだことを受けて、2023年12月に有識者委員会を設置。事案の原因分析や今後の再発防止策などの報告書が提出されたことから、JATAとしての再発防止策を明らかにしたもの。

有識者委員会では、不正事案の主な原因として、旅行業とは異なる受託事業に関する認識・知識不足、利益重視の風土及びコンプライアンス軽視、不正防止に向けた業務管理体制の不備、JATA地区委員会のガバナンス不全を挙げた。

そのうえで、報告書では対応策として、各種研修の拡充及び意識・風土改革、不正防止に向けた業務管理体制の整備を提言。今後導入される再発防止策について、継続的なフォローアップが必要とまとめた。

有識者委員会の五十嵐紀男委員長は、報告書策定にあたり、「JATA及び会員各社は、コンプライアンス体制を見直し、魅力ある旅行業の本分を発揮できる風土に改革することを強く願う」との談話を出している。

また、JATAの髙橋広行会長は「会長である私自身が先頭に立って、対応策を着実に実行することで、旅行業界から不正事案を根絶する」と力を込めた。

コンプライアンス強化に向けて決意を述べる髙橋会長

再発防止に向けて3つの改革

JATAは、「内部統制の改革」「地域組織の改革」「意識の改革」の3つの柱で再発防止に向けた具体的な対策を進めていく。

内部統制の改革では、まず各社で本社による支店の業務に対するチェックプロセスの策定を進める。また、公務受託案件でも業務プロセス管理ソフトなど電子システムを活用し、本社による支店業務の把握を強化する。さらに、JATAにコンプライアンス推進室及び相談窓口を設置するとともに、除名処分などの懲戒規定を整備したうえで、懲戒委員会を設置する。このほか、各社でコンプライアンスコードの制定・浸透を図るとともに、人事評価制度の改革も促していく。

地域組織の改革では、経営者と支店間のコミュニケーション改革を重視。車座対話などで双方の意識の同調を図る。支店長クラスでは、毎年実施されるコンプライアンス研修の受講を義務化。また、談合の温床との疑義を避けるために、現在の全国8プロック37地区委員会を廃止。各県別組織を改めて設ける場合は、設置目的などを明確化し、本部からのガバナンスを強化したうえで設置する。

意識の改革では、受託事業マニュアルを作成し、そのうえで事例研究を含めた受託事業計画に特化した研修を創設。また、コンプライアンス研修を実施し、各社・地域に講師を派遣する。さらに、5年ごとに受講が義務付けられている旅行業務取扱管理者の定期研修にコンプライアンス科目を導入する。

JATAの蝦名邦晴理事長は、今後のスケジュール感について、「それぞれの取り組み内容については準備が整い次第実施していく。研修など一定の準備期間が必要な対応については、内容を練ったうえで、可及的速やかに実施していく」と話した。

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…