北米市場で「日本を感じるお茶」ストーリー展開へ、静岡県・するが企画観光局が仕掛ける高品質旅行、その現地視察に同行した(PR)

静岡県中部エリアの観光地域づくり法人(DMO)、するが企画観光局は、同エリアのキラーコンテンツであるお茶を軸として、インバウンド向けに高品質旅行の開発とニッチ市場の開拓を進めている。地域産業をツーリズムと組み合わせることで、その海外展開と地域経済の持続性につなげることを目指した取り組みだ。その一環として、2024年2月、米国から旅行会社、観光マーケティング会社、ティーショップ(お茶販売店)のオーナーの3人を招聘。米国でのお茶ツアーの商品化に向けて、するが企画観光局が開発したプログラムの視察と体験を実施した。ターゲットはティーショップの顧客だ。

早ければ今秋にも商品化へ

今回の企画は、するが企画観光局が地域の茶農家との関係性をもとに仕掛けた。参加したのは、サンディエゴでティーショップ「PARU」を経営するエイミー・トゥオンさん、シアトルの旅行会社「アジア・アンサー」のジャネル・クックさん、するが企画観光局の米国でのマーケティングを担当する「ミリアッド・マーケティング」のマンディ・ステファナックさん。PARUが持つ顧客に向けた商品造成、そして駿河エリアへの送客を目指す。北米のお茶好きをターゲットにした究極のスペシャル・インタレスト・ツアー(SIT)だ。

エイミーさんは、日本をはじめ世界各地のお茶の販売を手がけるほか、日本の茶文化を全米に広める伝道師的な役割も果たしている。静岡や京都の茶農家から直接仕入れるなどビジネスパートナーとして日本との関係は深い。

しかし、エイミーさんによると、PARUの顧客のあいだでは、静岡が日本の茶産地の中心的な場所であることはほとんど知られていないという。「たとえば、宇治の抹茶はアメリカでも『Uji Maccha』としてブランド化されています。静岡の知名度はイマイチ。今後は、それを高めていきたい」と話す。

だからこそ、今回の企画は、インバウンド観光と茶農家のビジネスの両面でも直接的な効果が生まれ、持続可能な関係性が構築できると期待は大きい。アジア・アンサーでは、今回の体験を組み込んだツアーを早ければ2024年秋頃から催行し、可能ならば年2回ほどの送客を目指しているという。

地域産品を生かした高品質SITツアーへの期待は大きい

生産者との交流でリアルな日本体験

視察では、茶農家を訪れて、生産者の話に耳を傾けながら、そこでのお茶プログラムを体験した。

観光客受け入れのパイオニア的存在の「森内茶農園」では、自宅の「土間カフェ」で、お湯の温度の違いで味わいや旨みが変わること、同じ茶葉でも製法でさまざまな種類のお茶ができることをテイスティングしながら体験した。

エイミーさんは2023年5月にも森内茶農園を訪れ、すでに仕入れもおこなっているという。だから、質問は「冬の茶畑の様子は?」「収穫方法は?」「生産しながら、こうした体験を提供している理由は?」などと具体的だ。

一方、旅行会社のジャネルさんの質問は、「5月の送客は可能ですか」と実務的。園主の森内真澄さんは「実際のところ、5月は農作業が一番忙しい時期なのです。5月下旬から6月なら可能でしょう。梅雨の時期に入りますが、雨に濡れた茶畑も綺麗ですよ」と答えた。

最後は出がらしの「茶がら」を駿河湾の塩で食した。ジャネルさんが「結婚する前からお茶のことは詳しかったのですか?」と尋ね、森内さんが「全く知りませんでした。紅茶が同じ葉からできると知ってびっくりしたくらい」と答えると、土間は笑いに包まれた。

森内茶農園でお茶のテイスティング体験。(左から)ジャネルさん、マンディさん、エイミーさん

大井川沿いの山間、川根町の「たむらのうえん」も訪れた。ここは、茶畑に中に設置されたティーテラスが人気の場所だ。13代目園主の田村善之さんは、「若い人にもっとお茶のことを知ってもらいたい。子供の頃にお茶畑で遊んだ楽しい思い出をもっと広く知ってもらいたいと思っています」と話し、ティーテラスを作った理由を明かす。

訪れた日はあいにくの雨。晴れていればティーテラスで楽しめる川根茶のアフタヌーンティーは、田村さんの自宅の居間で体験した。参加者3人は、こたつに入り、川根茶とともに、オリジナルスイーツ「抹茶チョコレートフォンデュ」を味わいながら、生産者である田村さんの話に耳を傾けた。

居間は仏壇や神棚が備えられた伝統的な日本の家屋風景。参加者の一人は、神棚から吊るされた白い紙に関心を寄せる。そこに書かれているのが、生まれたばかりの田村さんの娘さんの命名だと知ると、「Congratulations」と祝った。これもリアルな日本体験だ。

日本に何度も訪れたことのある3人だが、「たむらのうえん」の伝統的な日本家屋には興味津々

駿河を感じる料理とお茶のペアリング

今回の4泊5日の視察の目玉の一つが、食事とお茶とのペアリング。「覚弥別墅(かくやべっしょ)」では和食、「穴子の魚竹寿し」では寿司、「ルモンドふじがや」では鉄板焼と合わせて、茶師や日本茶インストラクターが一品ごとに相応しいお茶を提供した。

なかでも、SUSHIは米国でも人気が高く、握ったのが女性の江戸前鮨職人だったことから、特に印象に残ったようだ。提供されたのは全11貫。お茶は、川根町の「朝日園」の茶師、朝比奈美紀さんが淹れた。最初のペアリングは、春の訪れを表すサヨリの昆布じめと静岡県知事賞受賞のお茶。独特の甘味とダシのような旨みが口に広がり、サヨリの味の余韻を深める。

江戸前鮨職人の千葉由美さんは、「江戸前鮨で重要なアイテムは、わさび、ガリ、酢、そしてお茶」と話し、江戸前鮨の技術やその歴史を説明してくれた。「江戸前鮨は仕込みに1日、食べるのは一口3秒と言われています」と話すと、カウンターは笑いで溢れた。

赤貝と和紅茶、本鮪赤身のヅケと水だし和紅茶、本鮪の中トロと温かい和紅茶、小肌と抹茶スパークリング、車海老と川根さくら茶、穴子には棒ほうじ茶、かんぴょう巻きと季節のほうじ茶が続く。

日本に暮らしたことのあるジャネルさんが「女性の鮨職人はまだ珍しいですか?」と素朴な質問。千葉さんは「今は珍しくないですが、江戸前鮨の職人になるとまだ少ないですね。修行期間がとても長いですから」と答えた。千葉さんは鮨職人歴26年になる。

朝日園の朝比奈さんはペアリングについて「千葉さんのお鮨はとても繊細で、職人の技が詰まっています。なので、それを殺さないように、添える形でお茶を用意しています」と話す。

最後は、芝海老入り厚焼き玉子と御薄で閉めた。サーモンやカルフォルニアロールなどが人気のSUSHIとは異なる、カウンターでいただく伝統的な鮨も本物の日本体験。静岡の市場で仕入れた新鮮な魚と川根の土地で育った茶葉が、そのペアリングの記憶を強くする。

茶師の朝比奈さん(左)と江戸前鮨職人の千葉さん 

アクティビティでお茶と触れ合う

視察にはアクティビティ系の体験も組み込まれた。その一つが墨の代わりに抹茶を使い文字を書く「抹茶書」体験。書道家の松蘭さんが始めた新発想の書道だ。鮮やかな緑色で描かれた書は、空気に触れることで徐々に茶色に変化し、味わいのある書体となる。

松蘭さんは、まず筆の持ち方や書く姿勢を教えた後、書道での「とめ」と「はらい」の重要性を伝え、「始筆から終筆まで、一回で書き切るところに書道の美徳があります」と強調した。

体験で選んだ漢字は、エイミーさんが「茶」、ジャネルさんが「友」、マンディさんが「成」。先生との手本を見ながら書くが、3人とも漢字を構成する線や点のバランスを取るのに苦労する。

3人は書道家の松蘭さんに手ほどきを受けながら「抹茶書」に挑戦

参加者は、異なる茶葉を合組してオリジナルのブレンド茶を作る体験も楽しんだ。教えてくれたのはマルヒデ岩崎製茶社長で茶匠の岩崎泰久さん。産地の異なる茶葉が用意された。岩崎さんによると「60度で入れると茶葉の長所がわかる。100度で入れると短所がわかる」という。そのうえで、テインティングをして「まず、一番好きなお茶を見つけてください。次に嫌いなお茶を見つけてください」と促した。

「お茶のブレンドは、主人公とその相手の悪役を見つけてドラマを演出するイメージでおこなうといいと思います。好きなお茶はそれだけでも美味しいですが、それに苦手だと思うお茶を少しブレンドすると、一番好きなお茶が一層引き立ちます」。

そう言われると、テイスティングをする3人とも真剣な表情に変わった。当然ながら、最終的なブレンドは3者3様。そこがお茶の面白みでもある。最後は、ブレンドしたお茶をティーバックに詰めて、そのイメージに合う商品名をそれぞれ考えた。

合組ではそれぞれの香りも重要な要素島田市で江戸末期から続く伝統工芸「志戸呂焼(しとろやき)」の工房も訪れた。ここは、焼き物の聖地である瀬戸から全国に散らばった職人集団がたどり着いたところの一つ。茶人・小堀遠州が選んだ「遠州七窯」の一つでもある。

特徴は、茶畑の土から掘り出される粘土を使うこと。五代目の丸山成己さんによると、1200度から1250度の高温に耐えられる粘土は珍しいという。

志戸呂焼は、花さし、花瓶、器など普段使いの陶器がメインになるという。一方、丸山さんは、その独特の渋さが表現される陶器を創作し、個展なども開いている。「この土地の土を使っているので、作品はこの土地の風土に影響されます」と丸山さんは話す。

体験では、丸山さんから指導を受けながら、粘土からそれぞれ好みの陶器を形作る。マンディさんはスープカップ、エイミーさんは茶碗、ジャネルさんは皿。作業に取り掛かると、3人とも口を閉ざし集中。丸山さんの手を借りながら、なんとかイメージする形に仕上げた。

3人の作品は、その後、釉薬をかけ、焼かれ、完成品は後日、本人のもとに郵送される。

志戸呂焼も静岡のお茶ストーリーの一つだ

マンディさんが最後に一言。「体験のすべてがストーリーで繋がっている」。その言葉が、すべてを物語っている。今後、商品化されるツアーでアメリカ人の日本茶ファンが、ストーリー化された体験にどのような反応を示すのだろうか。

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記事:トラベルボイス企画部

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