知床国立公園が世界遺産20周年、周年事業として「良質な自然体験の創出」と、「自然保全の発信」を展開

北海道知床国立公園では、2024年4月~2026年3月の2年間にわたって「知床国立公園60周年・世界遺産20周年記念事業」が実施される。知床国立公園は1964年に日本で22番目の国立公園に指定。また、2005年7月に世界遺産リストに記載された。

この事業は、環境省、林野庁、北海道、斜里町、羅臼町が、国立公園オフィシャルパートナーとして両町と包括連携協定を結ぶゴールドウィンおよびスノーピークと連携して行う。

周年事業を通じて、知床の普遍的な価値を再認識し、その保全を進めるとともに、良質な自然体験を創出してくほか、持続可能な観光を実現していくためのルールやリスク管理などを広く発信していく。環境省釧路自然環境事務所所長の岡野隆宏氏は「知床は地域の人たちによって守られてきた。この事業を通じて、国立公園利用者を含めて日本全国で守っていく意識を高めていく」と周年事業の意義を説明した。

具体的には、知床を訪れる旅行者に対して、「自然環境への配慮」「ヒグマに対する注意」「地域の生活・文化への配慮」の3つの柱からなる「知床半島中央部地区利用の心得」を事前に周知する取り組みを進める。特に、ヒグマに対する注意では、「餌を与える」「著しい接近」「つきまとい」は、自然公園法違反となり、罰金の対象になることを伝えていく。

周年事業では、今年6月1日にゆめホール知床・文化ホールで「国立公園指定60周年記念シンポジウム」を開催。9月14日と15日には、「SIRETOKO Adevneture Festival」として、斜里町の「知床自然センター」でゴールドウィンがアウトドアイベントを行い、羅臼町の「羅臼オートキャンプ場」ではスノーピークがキャンプイベントを開催。2日間のイベントでは、相互に往来できるようにする。

2021年10月に、ゴールドウィンは斜里町と、スノーピークと羅臼町とそれぞれ「地域活性化に関する包括連携協定」を締結している。

このほか、2年間にわたって、斜里町、羅臼町に加えて札幌市でもさまざまな関連イベントが企画されているほか、2025年4月に開幕する大阪・関西万博でも自然遺産地域としてのメッセージを世界に発信していく。

知床は人生観が変わる場所

周年事業の開始に合わせて実施されたメディア向けフォーラムでは、関係者によるトークショーも行われた。羅臼町の湊屋稔町長は「知床は自然環境が厳しい場所だが、人生観が変わる場所でもある。その瞬間を感じてほしい。また、地域の人たちの話に耳を傾けて、知床の環境を学んでほしい」と呼びかけた。

斜里町の山内浩彰町長は、「みどりと人間の調和を求めて」を斜里町のまちづくりの考え方として紹介。「知床は自然からさまざまな恩恵を受けている。国立公園60周年、世界遺産20周年で培ってきたものを多くの人と共有していきたい」と意欲を示した。

アウトドアブランド「ノースフェイス」を展開するゴールドウィンの渡辺貴生社長は、地域の人との交流で新たな学びを得ることがアウトドアの意義としたうえで、「自然は美しいものだが、厳しいものでもある。自然に入る時、その地域に暮らしている人たちのことを思う謙虚さが大切」と強調した。

全国でキャンプフィールドを展開し、「野遊び」を提唱するスノーピークの山井太社長は、「デジタル時代のなかで、究極のリアル体験をすることがアウトドアの意義だろう。子供たちを中心にアウトドアの人口を増やしていく必要がある」との考えを述べた。

(左から)羅臼町の湊屋町長、スノーピーク山井社長、ゴールドウィン渡辺社長、斜里町の山内町長

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