ANAは、国際線の強化路線として、ハワイ線への投資を強化してきた。現在は、成田/ホノルル線で3機のA380「フライングホヌ」を投入し、1日2便を運航している。また、「マイルで生活する」ANA経済圏をハワイでも拡大。2023年のハワイへの日本人旅行者数は2019年比64%減と回復が遅れるが、ハワイ重視の戦略を継続している。
GWの旅客数はJAL超え
今年のゴールデンウィーク期間(2024年4月27日~5月6日)、ANAのハワイ線の座席供給量は2万5449席で、2019年同期比の約1.5倍に拡大。それに合わせて、旅客数も増加し、前年比約1.5倍、2019年比でも約1.4倍の1万6469人で過去最多となった。
一方、JALが公表しているグアム線を含めた旅客数は1万6480人。単純にハワイへの送客数だけを見ると、ANAはJALを抜いたことになる。2019年はJALの半分ほどの旅客数にとどまっていたことを考えると、ANAのハワイでの存在感がそれだけ高まっていることが伺える。
ANA販売企画部国際統括チームリーダーの小堺信彦氏は、ハワイ線の概況について、「通年で生産量が増えているが、搭乗率は追いついていない」とするものの、日本人旅行者が戻りきっていないなかでも手応えを感じているという。
その要因の一つは、好調なビジネスクラスの需要。小堺氏は「為替の影響もあり、お金に余裕のある人が先に動き始めている。せっかくハワイに行くならビジネスクラスで、という旅行者が現時点では多い」と明かす。
一方で、ダイナミックパッケージ「ANAトラベラーズ」を扱うANA X旅行商品部DP素材チームリーダーの圓藤真治氏は「エコノミークラスを利用するファミリー層が戻っていない。そこが戻ってこないと、難しい状況は続く」と課題を口にする。
そのため、ホテル販売にも影響が出ているという。圓藤氏は「単価が安いため、数を取り扱わないと利益が出にくい。ホテル単品販売を伸ばしていくのが、大きな目標の一つ」と話す。
このほか、個人旅行化が進むハワイだが、「座席数520席のフライングホヌはワンショットで団体を運ぶことがてきる」(小堺氏)利点を生かし、教育旅行やハワイでのイベントへの送客にも意欲を示した。
ANA Payの利用拡大でハワイでもマイルで生活を
ANAは、現地ハワイへの投資も継続している。2016年には、ワイキキ中心部にANA専用ラウンジ「マハロラウンジ」をオープン。ANAマイレージクラブ(AMC)会員のANA便利用者やANAトラベラーズの対象商品購入者向けに、オプショナルツアーの手配、現地情報の提供、手荷物預かりサービスなどを提供するほか、AMC会員限定でワイキキ/アラモアナセンター間で電気パス「ANAエクスプレスバス」も運行している。
また、ハワイでのスマートフォン決済「ANA Pay」の利用拡大も進めている。ANAハワイ支店では、利用可能店舗の拡大で営業活動を強化。ハワイ支店支店長の後藤勝氏は「円安で滞在コストが高くなっているなか、AMC会員になってもらい、ANA Payを利用することで、マイルで生活する旅をハワイでも楽しんでもらいたい」と話す。
「ワイキキは、狭いエリアに多くの店舗が集まっている。ABCストアで気軽にマイルで支払えるなど、ANA Payとの親和性が高い」と期待は大きい。支払いは「Smart Code」「iD」「Visaタッチ決済」でおこなえるため、汎用性も高い。ANAとしては、ハワイでもANA経済圏を拡大させていく戦略を進めていく考えだ。
変化が見えるハワイの滞在スタイル
日本人旅行者の現地での過ごし方にも変化が出ている。後藤氏によると、円安と物価高の影響で、ホテルのキッチンで自炊する日本人旅行者が増えているという。「以前は考えられなかったが、日本人旅行者の部屋から大量のゴミが出るようになったと嘆くホテルもある」と明かす。
また、オプショナルツアーの環境も変化。定番ツアーの人気は以前と変わりないものの(圓藤氏)、コロナ禍を経て、催行本数が絞られたままであることから、旅行者数は戻り切らない中でも、予約が取りづらい状況が続いているという。そのような状況のなか、後藤氏は、オプショナルツアーも日本出発前の予約を勧めた。
さらに、ハワイ旅行のリピーター率が70%に迫るなか、ハワイ在住の日本人が個人で提供するプライベートツアーに参加する旅行者も増加。また、言葉の心配がほぼないため、移動でライドシェアUberを利用する日本人旅行者も増えているという。
ハワイは海外旅行市場のベンチマークとなるデスティネーション。日本人の旅行スタイルの変化は、ハワイの動きを追えば見えてくるのかもしれない。
取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹