ドイツ観光局はこのほど、メディア向け発表会を開催し、コロナ禍後の観光動向について説明した。2024年1~3月(第1四半期)の日本人宿泊数は、2019年比60%まで回復。アジア地区統括局長兼日本支局長に西山晃氏(写真)によると、「ゆっくり回復している状況」で、2024年通年では「2019年比で60〜70%の回復」になると見込んでいる。
西山氏は、回復が緩やかな要因として「インフレ」「飛行時間」「歴史的な円安」の3点を挙げる一方で、個人旅行者の回復が顕著な点を指摘。また、日本人旅行者がドイツの大都市だけでなく地方の小さな都市を好み、文化観光に関心が高い成熟市場であることを説明し、「(日本人の旅のスタイルは)地方経済に寄与できる観光。そして、意識せず、サステナブルな旅行を楽しんでいる」などと分析した。
こうした状況を受け、2024年は高所得者層やアクティブなリピーター向けに旅行会社を通した需要喚起を展開する方針だ。具体的には、ドイツ観光局50周年をフックとして旅行商品にインセンティブを提供。また、旅行会社向けの商談会や視察ツアーを展開する。
BtoCでは、円安によって欧州旅行に手が出にくくなった中間層向けに、中期的な関心喚起を目指し、オンラインメディアやソーシャルメディアでのキャンペーンに力を入れていく方針だ。同局では、以前から特にSNSマーケティングに注力しており、これまでの検証から、SNSで発信するコンテンツとして、ニュース性や意外性、希少性が重要とみている。それを踏まえた画像の選択やコンテンツを作成していく方針だ。
さらに、すでにスタートしている「ユネスコ世界遺産」「文化と芸術の国」をテーマとしたキャンペーンに加え、9月からは昨年に続き、サステナブルな旅を訴求する「FEEL GOOD」をアピール。このほか、2025年の欧州文化首都に選ばれた「ケムニッツ」や、7月半ばまで開催されている「EURO2024」など話題性の高いテーマで訴求していく。
日本支局開局から50周年、新たな市場開拓の歴史
ドイツ観光局は日本支局が開局から50周年を迎えたことを記念し、都内でレセプションも開催した。駐日ドイツ連邦共和国大使のクレーメンス・フォン・ゲッツェ氏が挨拶にたち、「この50年間、ドイツ観光局は、ドイツの魅力を日本で積極的に伝えてきた。その成果として両国間で多くの人、企業とのつながりが生まれてきた」と話し、50年間の活動に対して謝辞を述べた。
ドイツ観光局日本支局は、1974年に開局。海外旅行自由化から10年後という当時、日本の旅行市場ではロンドン、パリ、ローマなど大都市をめぐる旅が主流だった。ドイツ観光局では、開局後、旅行会社との連携によって1970年代に「ロマンチック街道」、近年では「クリスマス市」など新たな市場を開拓するプロモーションを実施。大都市だけが欧州旅行でないことを知らしめる先駆けとなる活動を展開してきた。50周年のレセプションは、その歴史を振り返り、未来に向けて旅行者の回復を祈念するイベントとなった。