ドライバー不足の解消へ採用活動に猛攻勢、岡山・両備グループが推進した運転体験会や賃上げの成果とは?

観光、公共交通ともに需要が好調に推移する一方で、物流の「2024年問題」などで人材不足が叫ばれている運輸業界。そんななか、個性的な採用活動で当初の目標を上回り、求職者のニーズも満たしたのが両備グループだ。2023年6月末から1年かけて推進してきたのは「宇宙イチ本気(マジ)な乗務員採用プロジェクト」。その成果と浮かび上がってきた課題を同社が明らかにした。

当初目標上回る216人を採用

「1年間の採用活動の結果、200人の目標に対して応募者数1054人、216人の採用を採用し、目標を達成した」。2024年7月に開催した記者会見で、力強く語ったのは、両備グループ トランスポーテーション&トラベル部門 副部門長で両備ホールディングス常務執行役員 バス・鉄軌道ユニット長の大上真司氏だ。コロナ前の2018年、2019年との比較で、同部門の採用数は約1.6倍となった。

岡山県を拠点に約50社、従業員数約1万人を擁する両備グループ。このうちバス・鉄道軌道、トランスポート、フェリー、タクシーの4ユニットで構成するトランスポーテーション&トラベル部門には約1720人の乗務社員が働いている。しかしながら、コロナ禍後に浮き彫りになった乗務社員不足、加えて労働時間などの基準改正は大きな課題。そこで、両備グループは同部門でベア・昇給合わせて平均5%以上の賃上げ、プロジェクト名をはじめとするユニークなTVCMの集中投下、運転体験会、大人向けのインターンシップ、デジタルプロモーションなどの施策を矢継ぎ早に打った。その結果が、コロナ前、目標を上回ることができた社員の採用だ。

成果がでた理由について同社は、「経験者の採用は2割程度でとどまっており、他産業からの転職をターゲットに入り口を広げて活動したところ、潜在的にまだまだプロドライバーへの憧れ持つ人が少なくなかったこと、大型免許取得など簡単ではないが、運転体験会などを通じ、仕事内容をしっかり理解してもらえたことが大きい」(大上氏)と説明する。実際、採用者へのヒアリングからは「自分の夢をあきらめたくなく、運転体験会には妻も連れて参加し、覚悟を決めた」といった声も挙がっているという。

記者会見での両備グループの大上氏

若手・女性社員の確保が課題

同グループの場合、これまでは50代以上のベテラン乗務社員の割合が全体で46.7%を占めていたが、今回の216人のうち全体の約6割は10~40代の採用に成功した。10~30代は37.5%だ。その一方で、女性採用比率は全体の8.8%にとどまっており、「サステナブル経営を実現するために、性別を問わず、働く人の意思や個性を尊重し、特に若手が責任感とやりがいを持てるような、職場・環境・働き方にもっとチャレンジしていく必要がある」と大上氏。今後10年以内に退職が続出することも想定され、「地域の皆さんに安心してもらえる公共交通を構築するために、若い方も活躍できるよう、まだまだ頑張らなければならない」と語った。

今回の採用が目標を上回ったことにより、両備バスの主力路線である西大寺線を増便することもできた。公共交通と観光交通の考え方については、「まず地域の人々の足を守ることが最優先。そのなかで、日本全国でインバウンドが増加し、需要が供給を上回っている。オーバーツーリズムに対応し、公共交通と両立できる観光交通の乗務社員確保は不可欠」(大上氏)との方針だ。

両備グループ トランスポーテーション&トラベル部門の次期プロジェクトについては、新規入社者の年齢構成を10~30代男女で40%以上、全体で200人採用を目指している。

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…