ハワイ島、「島全体の観光はほぼ日常通り」、火山噴火から観光需要の回復に向けた施策を聞いてきた

2018年5月にキラウエア火山が噴火したハワイ島。6月の渡航者数は前年同月を上回る予測で、観光への大きなインパクトは現時点で表れていないが、2017年9月に日本航空(JAL)の成田/コナ直行便が復活し航空座席数が増えている今年下半期の日本人の需要は、今後の流通を左右する点で大きな局面を迎える。

7月19日に記者会見を開いたハワイ州観光局のミツエ・ヴァーレイ局次長、ハワイ島観光局のロス・バーチ局長らに火山活動の最新情報、需要喚起のための新戦略と今後の見通しを聞いてきた。

全フライトが通常運航、被害地域は島全体の0.2%

ハワイ島観光局のバーチ局長

まず、火山噴火の現状はどうか。

ハワイ島観光局のバーチ局長は、「火山活動は35年間続いており、地元の人間にとって日常生活と変わらない。避難生活を余儀なくされている住民はいるが、避難所はわずか7km先で隣町のようなもの。死亡者もおらず、島全体の観光はほぼ日常通りだ」と強調。ハワイ州観光局のヴァーレイ副局長も「ハワイ島は四国の半分ほどの巨大な島。避難地域は限られたエリアで、リゾートホテルが集中するコナから100km以上離れている。距離感が伝わりにくいのが課題だ」と、風評に惑わされないでほしいと訴えた。

現在、溶岩が流出しているエリアは約25平方キロメートル以下で、ハワイ島全体の約0.2%。全フライトが通常運航し、キラウエア山頂、イーストリフトゾーンなどの避難地域を除き、宿泊施設やツアーは通常営業している。キラウエアがあるハワイ火山国立公園は閉園中だが、公園ゲートから車で1時間南に位置し、1868年に発生した溶岩流、天然林などを徒歩散策できるカフクユニットは開園し、各種プログラムを楽しめる。

記者会見には、JALからJL767運航乗員部第1路線室室長の板垣英樹機長、ハワイ大学ヒロ校地質学科客員教授を務めるリック・ハズレット氏という空や地質学のプロフェッショナルも登壇した。噴火後も2回、成田/コナ線を操縦したという板垣機長は、「今回の噴火はエンジンや窓ガラスに影響を与える火山灰が見られないこと、コナ空港と避難地域の間には4000m級の山脈がそびえコナでは噴煙や溶岩を見ることなく、硫黄の匂いを感じなかった」との2点を指摘。その一方で、コナ空港に着陸できない万が一に備え、ホノルルに戻る燃料も搭載しているJALの安全対策も明らかにした。

実際にヒロに住んでいるという火山教授のハズレット氏は、「火山灰ではなく溶岩が噴出する予想された噴火であり、有害な火山ガスによる空気汚染の影響も皆無といって等しい」などと証言した。

プロモーション本格化 今しか見られない火山活動も商品化を検討

火山噴火の影響は最低限にとどまっているとはいえ、旅行会社や航空会社の新規予約は苦戦している。

日本からハワイ島には2016年にハワイアン航空、2017年にJALの直行便が就航したことで、ハワイ州観光局は当初2018年に前年比22.7%増の23万人の日本人渡航者数を目標としていたが、今回の火山噴火を受けて18万人に下方修正。2019年に再び23万人を目指すとしている。

需要回復に向けた施策では、ハワイ州観光局の公式ホームページでキラウエア火山噴火に関する最新情報を発信し、6月にはリピーターに向けた販促を行ったのに続き、7月から需要喚起策を本格化。ハワイ州観光局、JAL、ハワイアン航空が協働で「今こそハワイ島に、行こう。」キャンペーンを展開する。

具体的には、9月30日までトミーバハマ銀座のレストランでハワイ島ならではのメニューを提供し、フラやウクレレのショー、ワークショップを開催、SNSキャンペーンも実施し消費者への訴求を図る。3社が共同でプロモーションするのは初めての試み。加えて現地から関係者が緊急来日している点も、消費額が高い日本マーケットを重要視し、一刻も早い需要復活を期待する姿勢がうかがえる。

地球の息吹を感じるパワースポットやカルチャーはもちろん、オーシャンフロントの小さなカフェや可愛いひんやりスイーツなど、インスタ映えするシーンがたくさんある若い人にもクチコミで人気が広がっているハワイ島。ハワイ州観光局のヴァーレイ副局長は「ハワイ島は火山の印象が強いが、カメハメハ大王にまつわる名所、コナコーヒー、日系移民の歴史などさまざまな魅力にあふれているのを訴えるチャンス」と話す一方で、「今しか見られない火山活動の壮大さも、安全を十分確保しながら商品開発につなげていきたい」と、火山活動が新素材になり得るという逆転の発想も需要の鍵になるとの見方を示した。

7月19日開催された会見。左からバーチ氏、ヴァーレイ氏、ハズレット氏、ミスアロハハワイ2018のテヒナ・スレイドさん、板垣氏、ハワイ・ツーリズム・オーソリティのカラニ・カアナアナ氏

取材・記事 野間麻衣子

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