観光庁と日本旅行業協会(JATA)は、2019年の政府目標である日本人海外旅行者数2000万人を達成したことを受けて、「日本人海外旅行者数2000万人達成祝賀会」を開催した。2019年の日本人海外旅行者数は前年比5.9%増の2008万600人。政府は2007年の観光立国推進基本計画のなかで2020年までに2000万人の目標を明記。1年前倒しで目標を達成した。
祝賀会の冒頭挨拶に立った田端浩観光庁長官は、「日本人が海外に行くことは国際交流のために非常に重要」と海外旅行を位置づけたうえで、今春の羽田空港発着枠拡大に触れ、「海外旅行市場にとって、今年も好材料が揃う。魅力ある新しいデスティネーションを開発するチャンス」と強調し、旅行会社に新しい商品の造成を呼びかけた。また、グローバル人材育成の必要性にも言及。「今年は、教育旅行などにもしっかり取り組んでいく」と付け加えた。
JATAの田川博己会長は、「2000万人は、旅行会社、空港、航空、ツアーオペレーター、保険会社など旅行に関わる人たちによって『ワンチーム』で達成されたもの」と評価。東京オリンピック・パラリンピックを迎え、世界206カ国から旅行者が日本を訪れる2020年を「交流の新時代」と位置づけ、アウトバウンドでは「旅行先のマルチ化を進めていく」考えを示した。このほか、現在拡大が懸念されている新型コロナウィルスについても触れ、「我々はSARSなどを乗り越えてきた経験がある。その経験を踏まえて、前に進んでいきたい」と力を込めた。
日系航空会社2社の代表も挨拶。ANA取締役常務執行役員の稲田健矢氏は、羽田発着枠拡大によって今年3月29日から、新規路線としてミラノ、イスタンブール、深セン、ストックホルム、モスクワに就航することを紹介。旅行会社にツアーの造成を呼びかけるとともに「政府目標である交流人口6000万人に向けて貢献していく」と意気込みを示した。また、JAL執行役員国際旅客販売本部長の柏頼之氏は、「2000万人は通過点。日本の出国率は16%とまだ先進国に比べて低い」としたうえで、JALとしては若者層へのアプローチと地方発の需要喚起に力を入れていく考えを示した。
このほか、訪問国を代表してヤッファ・ベンアリ駐日イスラエル大使も登壇。「観光は旅行者の単なる楽しみだけでなく、イスラエルと日本との経済交流にとっても重要」と強調。また、イスラエルから日本への旅行者数は20年前の約8000人から2019年には4万5000人に拡大し、2019年の日本からイスラエルの日本人旅行者数も前年比30%増の2万6000人になったことも紹介したうえで、昨年の直行チャーター便の成功を経て、今年3月11日からエルアル航空が週3便でテルアビブ/成田線の運航を開始することから、「2020年は双方向で8万人を超えるだろう」と期待感を示した。
最後に乾杯の挨拶に立った御法川信英・国土交通副大臣は「観光は、海外との未来志向の関係を築くための基盤。日本外交にとつても重要な政策」と話し、政府一丸、官民一体となって観光交流の発展に取り組んでいく方針を示した。