政府は2020年11月24日、観光需要喚起策「GoToトラベル」について、新型コロナウイルス感染拡大が深刻な地域を一定期間、割引の除外対象にすると正式発表した。国土交通省の赤羽一嘉大臣は同日開催した記者会見で、「感染が相当程度拡大している地域について、都道府県知事の判断を踏まえ、GoToトラベル事業の対象から一定期間除外する」と明言。24日段階では、北海道が札幌市、大阪府が大阪市の一部停止意向を表明しており、10月以降、東京発着の除外解除で急伸した国内旅行需要は大きな影響を受けそうだ。
国交省によると、GoToの補助を利用して感染拡大が深刻なエリアを目的地とする新規予約を一時停止し、すでに予約済みの旅行についても割引の対象外とする方針。利用者にはキャンセル料がかからないようにし、キャンセルで影響を受ける観光事業者には、国が旅行代金の35%を上限に補填する。補償は手配にかかる実費など実損額となる。感染拡大地域におけるGoTo補助一時停止の期間は3週間程度を想定している。
一方で、札幌市や大阪市など感染拡大地域の市民が市外へ旅行する際は、引き続き割引の対象となる。その理由について赤羽氏は、「医療ひっ迫を回避するために強い措置を講じなければならない段階。健康な状況で他の地域に行くことは対象ではなく、到着主義と考えている」などと述べた。この判断には、これまでGoToを利用した旅行者が延べ約4000万人を超えるなか、宿泊期間中に陽性判断された人がわずか45人にとどまるなど、GoToトラベル事業が感染拡大の主因とするエビデンスが存在していないことも背景にある。
大阪府知事の吉村洋文氏は同日府庁で開いた新型コロナウイルス対策本部会議で「医療ひっ迫が厳しい状況のなか、(GoToトラベル、GoToイートについて)いったん中止すべき」と明言している。飲食店には27日から時短営業、休業を要請する予定だ。また、府が行っている「少人数利用・飲食店応援キャンペーン事業」も11月27日0時から12月11日23時59分までの間、新規予約を停止することも発表している。
なお、GoToトラベル対象の商品を販売する旅行各社はシステムや運用面での対応に追われている。24日22時段階では、運用条件などの詳細が発表されておらず、旅行各社はそれを待って旅行者に対応を発表するとしている。7月の事業開始時の「東京除外」の経験から、特定の地域が感染状況によって除外されることは想定されていたものの一定の混乱は避けられそうにもない。