海外旅行の本格的な再開に向けて、世界でさまざまな「デジタル・ヘルス・パスポート(デジタル検査証明)」の開発が進んでいる。2020年10月初旬から試験運用が始まった「コモンパス」は、12月から、ジェットブルー、ルフトハンザ航空、スイス・インターナショナル・エアラインズ、ユナイテッド航空、ヴァージン・アトランティック航空が採用。ニューヨーク、ボストン、ロンドン、香港発の指定便で使用されることになった。
コモンパスは、世界経済フォーラムと非営利団体のコモンズ・プロジェクト・ファンデーションが中心となり、37カ国の民間企業が参加して開発された。10月には、キャセイパシフィック航空が香港/シンガポール線で、ユナイテッド航空がニューヨーク/ロンドン線で運用試験を実施した。
コモンパスは、旅行者の新型コロナウイルス検査結果を保存し、認証するアプリ。当局は出入国の際に、その検査結果が信頼できる医療機関によるものなのか、目的地の入国要件に見合うものなのかを確認することが可能になる。個人的な健康情報を任意で非公開にすることもできる。
ジェットブルーのJoanna Geraghty社長兼COOはコモンパスの導入について、「我々は『Safety from the Ground Up』プログラムを展開し、アメリカの航空会社として最初にマスク着用を義務化するなど、地上と機内でさまざまな安全対策を講じてきた。コモンパスは、その対策をさらに強化するもの。デジタル・ヘルス・パスによって検査結果の信頼性が高まることで、旅行者の信頼もさらに高まり、安全な航空旅行の再開にもつながるだろう」とコメントしている。
また、世界の2000空港が加盟する国際空港評議会(ACI)は、航空会社、世界的な研究機関、ワチンメーカー、ヘルスケア企業から構成される「コモン・トラスト・ネットワーク」への参加を決めた。
コモンズ・プロジェクト・ファンデーションのポール・メイヤーCEOは「コモン・トラスト・ネットワークのへの加盟者は、個人の健康情報のデジタル化を進めるためのグローバル・ネットワーク構築に共同で取り組んでいる。これによって、個人情報を保護しながら、旅行、仕事、学校、日常生活に安全に戻ることが可能になる」と強調し、航空業界の国際航空運送協会(IATA)など、あらゆる業界の主要機関や企業の参加を促しているところだ。
一方、国際航空運送協会(IATA)は、2021年第1四半期のローンチを目指して、2020年末まで「IATAトラベルパス」の運用試験を実施する。
IATAのアレクサンドル・ドゥ・ジュニアック事務局長兼CEOは「国境が事実上閉じている現在、検査は自己隔離なしに海外旅行を可能にするうえで最も重要なこと。また、入国要件に合わせて、旅行者の検査結果を管理、共有、証明するグローバルな情報インフラを整えるのも重要だ。IATAトラベルパスはそれを可能にする」と述べている。
IATAとしては、世界各地で進む「ドラベルバブル(近隣の域内旅行)」のニーズに応えるために、今後数ヶ月以内にこのシステムを市場に投入する考えだ。
さらに、空港や航空会社向けにテクノロジー・ソリューションを提供しているInk Aviationは、Tento Healthとの協業で「デジタル・ヘルス・プラットフォーム」を立ち上げると発表した。このプラットフォームは、生体認証、「ヘルス・ウォレット」アプリのQRコード、パスポート、搭乗券などを組み合わせて、乗客の健康状態を認証する仕組みで、各国の入国管理当局やさまざまなデジタル・ヘルス・パスとの連携が可能になるという。
このほか、世界的な危機管理サービス企業のインターナショナルSOSは、国際商業会議所(ICC)と連携して、「AOKpass」を立ち上げている。このアプリは、ブロックチェーン技術を活用して、利用者の健康状態を保存するもの。9月にパキスタン発アブダビ行きの路線で最初の運用試験が行われ、今後さらに試験を拡大していく方針だ。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:Multiple digital health passports now available for COVID travel verification
著者: ミトラ・ソレルズ