「LINEトラベルjp」をLINEと共同で運営するベンチャーリパブリック代表取締役社長の柴田啓氏が、2021年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。
柴田氏は、厳しい市場環境を招いたコロナ禍が、皮肉にも2つの利益をもたらしたと言及。1つは、自社のビジネスを総点検する機会となったこと。もう1つはデジタル化によるライフスタイル、ワークスタイルの変化で、「パンデミックが発生しなければここまで急激かつ大胆には普及しなかった。これらの変化は旅行市場に新たな需要の創造と大きな生産性向上を生む」と展望した。旅行市場は変革しながらも、以前より大きな規模で必ず復活するとも述べ、パンデミックの大きな副産物をしっかり獲得する意欲を示した。
発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。
2021年 年頭所感
皆さまにとって2021年が健やかな年になりますよう謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
パンデミック発生からもうすぐ1年が経とうとしています。発生当初より「長く厳しい道のりになる」と予想していましたが、残念ながらその予想通り極めて厳しい市場環境が続いています。
憎きコロナウィルスですが、皮肉なことにこのウィルスは我々にこれまで得られなかったようないくつかの大きな利益をもたらせてくれたとも感じています。
1つは自社のビジネスを根本的に総点検させてくれる大きな機会を与えてくれたことです。自社の強みは何か? 経営に無駄は無いか? ビジネスモデルが時代に即しているか? など。パンデミックはこれらの疑問を徹底的に検証することを可能にしてくれました。
耳の痛い話ですが、旅行・観光産業は、実のところ、パンデミック以前から既に大きな構造的な問題を抱えていたと思います。ここ数年は、国内のみならず世界規模にて宿泊施設や航空便の供給が急激に増え、過剰ともいえる大きな資金供給量を背景としたテクノロジープラットフォーマーやスタートアップ企業も次々と本業界へ新規参入し、市場は大きな供給過多、競争過多の状況に陥っていたと思います。パンデミックはこうした市場の大きな構造的な課題を解決させる最大の機会になったと思います。
今後は、当社も含め業界各社が、限られた経営リソースの中で、筋肉質の経営体質へと生まれ変わり、自社の強みに集中し、徹底的にそれを磨いていくことが求められると思います。GAFAやTeslaなど今世界で成功しているどの企業も自社の強みを徹底して磨いた結果いまの地位を築いていると思います。
もう1つは人々のライフスタイル、ワークスタイルの大きな変化です。リモートワークやバーチャルミーティング、市場のあらゆるサービスにおけるデジタル化は、パンデミックが発生しなければここまで急激かつ大胆には普及しなかったと思います。これらの変化は旅行市場にとって新たな需要の創造と大きな生産性の向上を生むと思います。
ワーケーション、WFVH(Work From Vacation Home)トレンドによる滞在の長期化、民泊などのオルタナティブアコモデーションへの需要の高まり、バーチャルツアーやライブコマースなどを活用した新たな需要創造、AIなどのテクノロジーを活用した生産性の向上、サステイナブル・レスポンシブルツーリズムへの関心度向上など、市場にはいくつもの新しい芽が出始めています。前述したように、自社の強みを活かしながら、こうした新しい市場の変化にどう対応していくかが、今後、中長期での成長を決めることになると強く感じています。
弊社がLINEと共同運営するLINEトラベルjpはパンデミック下においても月間17 百万もの多くのユーザーにご利用いただき、あらためて旅行に対する市場の大きな需要とユーザーの皆さんおよびパートナーである旅行・観光事業者様からの弊社への大きな期待を感じています。
2021年は弊社創業20周年の節目となります。第2の創業を目指す所存で、このピンチをチャンスと捉え、前述したパンデミックの大きな副産物をしっかり収穫していくための土台を築く年にしたいと思います。皆さまには引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。
最後にこうした厳しい環境下においても日々強い意志をもって前向きに業務にあたってくれている当社グループ社員の皆さん、旅行・観光業界の皆さま、そして医療現場などの最前線で働いていらっしゃる方々にあらためて感謝と尊敬の念を伝えさせていただきたいと思います。
旅行市場は今後大きな変革を遂げながら最終的にはパンデミック以前よりも大きな規模にて必ず復活すると思います。大きく明るい未来にむけて、皆さまとこの危機を一緒に乗り越えていきたいと思います。
ベンチャーリパブリック代表 柴田啓(LINEトラベルjp)