交通運輸・観光産業の労働者組織、コロナ禍での現場の実態と公共交通の重要性を訴え、GoTo再開時の制度設計に要望

陸・海・空の交通運輸・観光産業で働く労働者の大産業別組織である交運労協(全日本交通運輸産業労働組合協議会)は、コロナ禍で人々の生活と移動を支える現場の実態と、安全確保に向けた横断的な取り組みを発信するドキュメンタリー短編動画「KeyWorkers(キーワーカーズ)」を制作し、その発表記者会見を開催した。

会見では、動画の制作背景としてコロナで大打撃を受けている交通運輸・観光産業の現状を説明。交運労協議長の住野敏彦氏は、「懸命に感染対策に励み、希望をもって働く現場の声をまとめた。安全確保に向けた横断的な取り組みを社会に発信していくことが必要。現場の実態をキャッチし、様々な角度で議論が起きればありがたい」と動画制作の趣旨を述べた。

交運労協事務局次長の慶島譲治氏は、「今回のパンデミックによる雇用危機の特徴は、負の影響が特定産業に集中していること」と、交通運輸・観光産業の影響の大きさを強調。交運労協の産業には専門性の高い職種が多く、雇用維持の重要性が高い。雇用調整助成金で守られている部分はあるものの、特に私鉄やバスなどでは「各種手当など基準外賃金に依存する産業であり、(雇調金では)従事者の生活は厳しい」と特殊な側面もあるという。

また、需要回復策のGoTo事業については、私鉄総連のアンケートで回収できた188社の38.9%が「効果なし」と回答。慶島氏は、GoToはマイカー利用が多いことがその理由で、慶島氏は「公共交通が過度に危険視される風潮があるが、ガイドラインを遵守することで安心して利用できる。GoTo再開時には公共交通の利用を促す制度設計にできないかと思っている」との考えも示した。

このほか慶島氏は、不特定多数の人と接する機会の多い職種であることから、従事者の家族が地域や学校でいわれなき偏見や差別を受けることもあると明かした。

住野氏は、交通運輸の利用やGoToが感染拡大の要因としてクローズアップされてきたことに「確かにその要因はあると思う」としながらも、公共交通でクラスターは発生しておらず、各事業者が公共交通の安心利用に向けた取り組みを推進してきたことを説明。「問題は感染防止の徹底したルール作りと、個人のモラルの啓発運動をしっかりすること」との考えも強調した。

ショートムービーのほか、従事者のインタビューや安全対策を紹介する特設サイトも開設

社会の『鍵』となる大事な働き手

今回のドキュメンタリー短編動画「KeyWorkers」には、鉄道やバス、タクシー、トラック、船舶、港湾、航空、観光など、コロナ禍でも生活と移動を支える従事者がいることを広く発信するとともに、こうした現場で働く従事者へのエールも込めた。動画内では交運労協からのメッセージとともに、交通運輸・観光産業の7産業から14名の従事者が仕事への思いを述べるとともに、安心安全への取り組みを紹介している。

「我々には、指定公共交通機関として運行する交通運輸産業がある一方で、不要不急といわれた観光産業もある。しかし、健康で文化的な生活を保障する意味で観光産業は重要。社会の『鍵』となる大事な働き手であるという意味を、『キーワーカー』に込めた。すべての職業に価値があり、その労働の尊さを、我々のあらゆる媒体を使って伝えていきたい」(慶島氏)という。

交運労協では同動画と同時に、各産業の従事者へのインタビューと各産業の安全への取り組みをまとめた特設サイトも公開。YouTube上に設けた公式アカウントやSNSなどで発信していく。

なお、交運労協では今後、コロナに関する各構成員の意見を取りまとめ、政府に対して、地方創生臨時交付金の使途に関する緊急要請を行う予定。また、医療従事者から先行接種が始まるといわれているワクチンについても、交運労協の産業従事者への優先接種を要請する方針だ。

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