ANAホールディングスは、2021年3月期第3四半期(2020年4月~12月)の決算を発表した。それによると、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による影響で、旅客需要が著しく減退したことで、売上高は前年同期比66.7%減の5276億円と大幅に減少し、4730億円のコスト削減策を実行したものの、営業損益は3624億円の赤字に転落。経常損失は3507億円(経常利益1225億円)、四半期純損失も過去最大の3095億円(純利益864億円)に落ち込んだ。
旅客収入は大幅に減少したものの、国際貨物は順調に推移した。第1四半期にマスクをはじめとする衛生関連用品などの緊急物資の輸送需要が増加したことに加え、8月からは完成車・自動車部品や半導体・電子機器等の需要が回復し始め、第3四半期には前年並みの水準に達した。この結果、国際線の貨物収入は同30%増の1016億円となった。
ANAホールディングス取締役常務執行役員の福澤 ⼀郎氏は決算会見で「国際貨物は想定以上に順調。貨物機の稼働率は過去に例のないほど高い。旅客需要の下振れも、国際貨物でカバーできるだろう」との認識を示した。
航空事業を見ると、国内線では、5月の緊急事態宣言解除以降、需要は回復傾向となったものの、12月からは感染者数の増加にともなって減少に転じた。このことから、旅客数は同71.5%減の990万人、旅客収入は同71.7%減の1563億円に下落。国際線の旅客数は同95.6%減の32万人にとどまり、旅客収入も同93.6%減の323億円と大幅に落ち込んだ。傘下LCCのPeach Aviationも同様に、旅客数は同72.6%減の158万人、旅客収入も同76.1%減の153億円と大幅減に終わった。
第2、第3四半期のGoTo効果は340億円に
また、福澤氏は「GoToトラベル」の効果についても触れ、第2、3四半期の収入ベースで340億円の効果があったことを明かした。そのうえで、「国内線のポテンシャルは高い。何かのきっかけがあれば、回復は早い」と話し、感染状況に合わせたGoToトラベルの再開に期待感を示した。
しかし、現在GoToトラベルが全国的に一時停止されているため、足元の国内線の状況は悪化しており、旅客ベースのマイナス幅は第3四半期の55%から70%以上に拡大。また、国際線でも世界的に移動制限が続いていることから、同社が示してきた「今年度末で国内線旅客数7割、国際線5割」という前提が「大きく崩れることを覚悟する必要がある(福澤氏)」との認識を示した。
それでも、ANAホールディングスでは、コスト削減と機動的な生産調整、国際貨物需要の拡大などから、2021年3月期の見通しについて、売上高7400億円(2020年3月期1兆8742億円)、営業損失5050億円(営業利益608億円)、経常損失5000億円(経常利益593億円)、当期純損失5100億円(当期純利益276億円)との予想を据え置く。
福澤氏は今後について、まずは昨年10月に発表した事業改革計画に基づき、固定費を中心としたコスト構造の見直しを進め、プラットフォーム事業などビジネスモデルの変換を加速させていく方針を示したうえで、「来年度の黒字化を目指す方針に変わりはない」と強調した。