JTB総合研究所が実施した「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査」で、シニア層の旅行意欲が2020年10~12月の期間中、女性中心に復調に転じたことが明らかになった。同調査は2020年2月から継続して実施しており、新型コロナウイルスが発生してから長くシニア層は旅行に対して消極的だった。
一方で、このまま渡航制限が続くと海外旅行の卒業を考えるシニアも少なくなさそうだ。新型コロナの感染拡大による消費者の変化を、旅行意欲と旅行意識の2回にわけて紹介する。
今回の調査は、2度目の緊急事態宣言下となった2021年1月中旬の結果を過去調査とも比較しながらまとめた。全国に居住する20歳以上の男女6520人にインターネットで予備調査を実施。2021年中に国内旅行を予定・検討している人984人を抽出し、2021年1月20~25日の期間中、本調査を実施した。
昨年10~12月、女性60歳以上の旅行実施率が急増
まず、2020年10~12月の旅行実施率は全体で25%。性年代別でみると、女性20代が36.4%でトップとなり、男性20代(30%)、女性30代(26.4%)、男性60歳以上(25.7%)が続いた。また、女性60歳以上は24.1%で、7~9月の16.9%から7.2ポイント上昇。全年代の中で最も伸び率が高かった。
一方、大幅に低かったのは、女性40代の16.9%で、7~9月の16.1%に比べてもほとんど伸びなかった。この層は非正規雇用の割合が高く、JTB総合研究所は「コロナ禍による雇用環境悪化の影響が大きいことも理由」と分析している。
2021年に海外旅行を「予定・検討」はわずか8%
次に、今後の旅行予定を聞いたところ、2021年に国内旅行を予定、検討している人の割合は全体で27.6%だった。ただ、2020年9月の調査では旅行意欲も実施率も低かった60歳以上のシニアが男性32.5%などと、40代、50代より意欲が高い結果となり、復活の兆しが読みとれる。
海外旅行を2021年に予定、検討している人は全体で7.5%。2022年も11.5%にとどまる。若い世代は男性20代・18.7%、男性30代・12.5%、女性16.3%と年内の意向が比較的高いものの、「以前は海外旅行に行っていたが、今後はしない」と考える人は、男性60歳以上12.9%、女性12.2%とシニア層が高く、JTB総合研究所は「海外旅行からの卒業意向がうかがえ、このまま渡航制限が長引くと、海外旅行の世代交代が加速するかもしれない」と警鐘を鳴らす。
緊急事態中は国の方針に沿って自粛意向強く
緊急事態宣言発出中の旅行については、「今は、国や自治体の意向に沿って移動を自粛するべきだ」が26.8%でトップ。「GoToトラベル」再開時の利用意向は全体で15.7%で、昨年4~12月のコロナ禍での旅行経験者が32.8%だったのに対し、旅行経験なしは6.1%と大きく差がついた。
また、2021年に旅行を予定している人に、今後どんな状況であれば旅行に行きたいか尋ねたところ、「良いプランや宿泊施設がとれれば(33.1%)」、「新型コロナの新規感染者数の減少傾向(29.8%)」、「新型コロナの終息宣言(28.9%)」の順。依然として新型コロナの感染状況に大きく左右されそうだが、旅行プランや旅行先の環境への関心も高まっているとみられる。
調査結果の詳細は下記から参照できる。