HIS、旅行の回復期に向け準備に着手、澤田会長「今が底」、中間決算は232億円の赤字

エイチ・アイ・エス(HIS)代表取締役会長兼社長の澤田秀雄氏は、2021年10月期第2四半期の連結決算説明会で、今後の成長に向けた経営方針として、強固な事業ポートフォリオの構築を目指す考えを示した。連結売上の7割を占める中核の旅行事業を、今後5年以内に5割とする方針だ。

既存のテーマパーク事業やホテル事業、エネルギー事業に加え、飲食事業、旅館再生事業などの新規事業を強化する。

一方、旅行事業の再成長も図る。コロナ収束段階ごとの市場の回復状況にあわせ、国内旅行、海外旅行、訪日旅行、グローバル旅行の各領域で事業を拡大し、2024年には旅行事業の売上高を2019年比22.2%増となる5600億円に引き上げる。特に国内旅行は2024年の売上高を、2019年の4倍となる1600億円に拡大させる方針だ。

あわせて、システムやテクノロジーの活用による合理化と生産性向上を推進。現在、グループの人員数は2019年段階の76%となる1万3975人(24%減)だが、最終的には2019年比で70%の人員数とする。需要が100%戻ったコロナ後には、増員なしでコロナ前と同じ水準の売上を上げられる体制を整えていく。こうした取り組みで、今回のコロナ禍のような危機が起きても安定的な収益・利益を出せるよう、バランスのよい事業体制の構築を目指す。

旅行事業の事業展開と市場回復の見通し

今後の旅行市場の見通しは、国内旅行が8月には回復基調に向かうと予想。回復基調とワクチン接種の拡大が進み、10月頃にGoTo事業が再開、安定的に続けば「(2019年の同期比で)予約は3倍、売上は2倍になる」(専務取締役・中森達也氏)と好況を見込む。海外旅行の回復までは、海外旅行の送客数300万人を国内旅行へ誘引する考えだ。

国内旅行で販売強化する方面としては、沖縄と北海道、九州を挙げる。特に沖縄はHISが強みとする海外ビーチリゾート需要を生かして年間100万人の送客を目指す。これに向け、すでに同社では仕入れ強化やダイナミックパッケージなどオンライン販売サイトの強化、ピーク期の航空チャーター事業の準備などに着手している。

一方で、海外旅行と訪日旅行の回復局面は、2022年春頃と想定。ワクチン接種の進行状況から、渡航可能先の増加が見込まれるのが同時期と見込む。海外旅行需要が2019年水準に戻るのが2023年第4四半期と予想。海外旅行の方面別の回復については、ハワイ・グアム、アメリカ、欧州、豪州、アジアの順と見る。回復時の仕入れ競争を見据え、海外旅行でもピーク期の航空チャーター手配やホテルなど仕入れの準備を始めているという。

グローバル事業(海外における旅行事業)の回復予想は、海外現地のインバウンド(日本人の受け入れ)が2022年3月頃。海外発のアウトバウンドは、すでに欧州からカナダなどへの旅行が始まり、予約が入っているという。2021年夏頃から緩やかに回復し、2022年末には2019年水準近くにまで回復すると見込む。HISバリ支店では2021年10月以降にロシアからの約8000名のツアーを受注していることから、トラベルバブルが形成されている市場に積極展開していく考えだ。

HIS代表取締役会長兼社長の澤田秀雄氏

このほか旅行事業では、2020年5月に開始したオンラインエクスペリエンス(OE)事業も強化。この1年でオンラインツアーの体験者数は9万人を超え、商品数は4300コースに拡大した。個人向けのオンラインツアーだけではなく、企業がクライアントや消費者向けに実施する商品販売のライブ中継やオンライン工場見学などの需要を見込んだ法人向け事業も展開する。また、オンラインサロンを開設し、HISの顧客コミュニティを基盤とした新たなビジネスモデルを開始した。こうした取り組みで2025年までに売上高60億円、体験者数100万人の事業にする計画だ。

また、海外(グローバル事業)では人員3000名、店舗数100店の削減をしており、デジタルによる流通網の拡充を強化。北米では今夏、新OTAサイトをローンチするほか、欧州ではアクティビティ予約「CEETIZ」をHISグループのGroup Miki Holdingsが買収。コロナ禍でも、回復期に増加が見込まれる個人旅行需要の獲得に必要な準備を行っている。

なお、旅行事業では全体的にインターネット販売を強化。特に海外旅行では2019年時点では売上の5割が店舗経由だったが、2024年には37%に縮小し、インターネット販売を2019年の30.6%から50%まで引き上げる。

2021年10月期第2四半期の連結決算

2021年10月期第2四半期の連結決算は、売上高が前年比80.4%減の677億円(2767億円の減収)で、営業損失が311億円(296億円の減益)、経常損失307億万円(300億円の減益)、純損失232億円(197億円の減益)を計上した。雇用調整助成金等の助成金収入として、特別利益48億円を計上。また、感染対策として臨時休業した施設の休業期間中に発生した費用20億円を、臨時休業による特別損失として計上した。

今期の結果について澤田氏は、「(2度にわたる)感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発と、ワクチン接種の遅れによるレジャー需要の回復後退が影響した」と説明。ただし、ワクチン接種の進行状況やレジャー需要の回復見通しなどを踏まえ、「今がボトム(底)」と述べ、2022年の通期黒字化を目指すと話した。

セグメント別業績

  • 旅行事業:売上高 290億円(2020年比90.3%減)、営業損失 180億円(163億円の減益)
  • テーマパーク事業:売上高 85億円(同13.2%減)、営業損失 6億円(1億円の減益)
  • ホテル事業:売上高 31億円(同51.5%減)、営業損失 26億円(21億円の減益)
  • 九州産交グループ:売上高 87億円(同29.9%減)、営業損失 9億円(11億円の減益)
  • エネルギー事業:売上高 176億円(同25.7%増)、営業損失 78億円(87億円の減益)
  • その他事業:売上高 18億円(同54.8%減)、営業損失 3億円(11億円の減益)

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