コロナ禍でニューノーマルが求められている時代、MICEのあり方にも変化が求められている。接触を完全に遮断したオンラインからリアルとオンラインを組み合わせたハイブリッドへ。MICEベニューとして、ホテルも新たな方法を模索している。日本ホスピタリティ・アセットマネージャー協会(HAMA Japan)が開催したウェビナーでは、イベントプランナー博展社が、「感動を創り上げる」新しいハイブリッドMICEを提案。ホテルの既存の設備を活用した新時代の演出とは。
コロナ禍の2020年、MICEのオンライン化が急速に進んだ。移動することなく、自宅から国内のみならず世界のイベントやミーティングにつながる効率性と利便性は、ニューノーマルでの必要性を超えて、広く受け入れられ、定着した。
しかし、博展プロデューサーの木村亮人氏は、オンライン化が進んだことで、「デジタルでは補いきれない部分が表面化し、フィジカルを求める声も高まりつつある」と指摘する。そのうえで、2021年はより深いコミュニケーションを求めるニーズが高まると予想。直接的な体験がより貴重なものになることから、デジタルとリアルを組み合わせたハイブリッド型でシナジーを生み合うMICEを実現させていく必要性を主張した。
一方で、テクノロジーを活用しても、ホテルの設備などインフラだけのハイブリット化では、コモディティ化するだけで、差別化は難しく、会場となるホテルにとっても、主催者側にとっても、ハイブリッド開催の価値を上げることはできない。
木村氏は「オンライン機能を充実させても、感動に欠けるMICEでは参加者の満足は得られない」と話し、新たにMICEを、M = Moment (瞬間の感動の創出)、I = Innovatoin (デジタルの活用)、C = Creation (空間演出)、E = Entertainment (記憶に残る体験)と定義。感動体験を演出する具体的な活用法として、イベントの規模に合わせ、客室を使った「スモール」、客室とバンケットを組み合わせた「ミディアム」、拠点ホテル同士をつなぐ「ラージ」をホテルに提案する。
規模に合わせて、インフラを最大限活用
スモールでは、展示会や販売会を想定。客室ごとに展示ルーム、体験ルーム、商談ルームを設け、来場者が目的に合わせて客室を移動する。コロナ前にも見られた形態ではあるが、コロナ禍中においては企業やイベント主催者が、規模や運営形態によって客室の数を調整するなど柔軟な対応が可能なほか、時間や招待人数で人流を調整することもできるとした。また、来場者には、展示内容ごとに客室で空間演出を施し、用途の掛け合わせでフロアを回遊してもらうことで、これまでにない体験を提供することができると紹介した。
ミディアムは、セミナーや学会などのイベント向けに演出。バンケットで開催されるリアルイベントを客室からも視聴可能にすることでホテル内のハイブリッド化を進める。客室では、室内演出や軽食の提供などでホテル側のおもてなしを提供するほか、情報収集の機会の設定や他の客室の参加者同士をつなぐ仕組みを構築し、一方、バンケットではクレーンカメラなどを用いたダイナミックな映像演出を実施。客室とバンケットとで上質な時間を共有できる環境づくりを提案する。
ラージのターゲットはインセンティブ、研修、国際会議など。これまでは1ヶ所に参加者を集めていたイベントを複数拠点に分割開催することで、リスクを分散。たとえば、緊急事態宣言の地域を外し、運用することも可能になるとしている。また、分割することで、新たな来場者や登壇者の参加を促すことができるほか、会場では地域性の演出、さらに会場間をネットワークでつなげれば、会場を横断した対談も可能になると提案した。
木村氏は「オンラインが浸透した今だからこそ、ホテルらしいハイブリッドMICEを考え直すべき」と強調。ハード面だけではなく、企画性、オリジナリティ、クオリティを追求していく必要性を説いた。