日本修学旅行協会がまとめた「教育旅行年報データブック2021」で、2020年度に修学旅行を当初計画から変更・中止した学校は、全体の9割強に上ることがわかった。海外旅行を実施した学校は皆無だった。調査は全国の国立、公立、私立の通学校1万142校から3056校、高等学校4874校から3068校を抽出しアンケート調査を実施。中学校1046校、高等学校1147校から回答を得たもの。
まず、2020年度当初の修学旅行計画は、中学校では国公立はほぼすべての学校が国内だが、私立は国内・海外選択制も合わせて32.3%の学校が海外を計画していた。ほぼコロナの影響を受けていない前回調査での、私立中学校の海外修学旅行実施率は21.5%だった。
高等学校では、国内・海外選択制の学校も合わせ、国公立では14.6%、私立では44.5%、全体で26.1%の学校が海外を予定していた。前回調査で海外修学旅行を実施した高等学校は全体の14.9%だった。
出発時期・方面の変更は3~4割
2020年度は、2019年末に中国で発生し、瞬く間に全世界を席巻した新型コロナウイルス感染症の影響が甚大だった。政府から全国の小中学校に対して一斉休校の要請がおこなわれ、2020年3月2日から開始されたほか、緊急事態宣言も発出された。こうした結果、中学校では、国公立で変更53.3%、中止45.5%、私立で変更20.4%、中止77.5%、高等学校では国公立で変更37.9%、中止58.4%、私立で変更28.6%、中止66.1%だった。中学校・高等学校ともに、ほとんどの学校がいずれかを強いられたことになる。
中止した学校の割合が中学校・高等学校ともに国公立より私立のほうが高いことについて、日本修学旅行協会は「私立は当初計画で海外の割合が高く、目的が達成できなかった。また、中高一貫教育校では、実施学年を変更して延期を判断した」と分析している。高等学校の中止した率が中学校より高いのは、中学校は3学年で実施するのがほとんどだが、高等学校は2学年時に実施することが多く、次年度へ実施計画を変更した学校が多かったことが影響しているという。
なお、変更した上で当年度内に実施、あるいは次学年での実施予定の学校に対して変更内容を聞いたところ、中学校・高等学校ともに、全体では出発時期は38.7%、旅行方面は32.9%、旅行日数は22.3%だった。多くの地域が自県内または近隣県での実施、交通手段を航空機・JRからバスなどへの変更を自治体などから指示・推奨され、方面変更をした学校が多くなっている。
営業上、変更手数料を請求しない旅行会社も
変更・中止の手数料発生の有無については、中学校では国公立で「発生あり」が54.1%と多く、私立では逆に「発生なし」が67.2%と多い。高等学校では国公立で発生の有無がほぼ均衡し、私立では「発生なし」が58.4%とやや多い結果となった。私立で「発生なし」が比較的多いのは、公立は単年度入札が多いが、私立の場合は複数年分の一括入札や、旅行行事などの一括入札を取り入れているケースがあり、営業上の観点から旅行会社が取消料は発生したが、請求しなかった場合があるという。
変更手数料や取消料が発生した学校からの回答を集計したところ、国公立は自治体からの公費負担が多い一方、私立は手数料発生の割合が少ない一方、保護者が負担したケースも少なくない。日本修学旅行協会は「私立はコロナによる延期を何度もすると負担が増加するため、延期ではなく中止にした学校が多い」と推測している。