スイス政府観光局、日本人旅行者の復活へ、現地観光事業者が来日、旅行業界向け商談会を実施

スイス政府観光局が、都内で3年ぶりとなる旅行業界向けワークショップを開催した。イベントに合わせて、現地から地域観光局や鉄道会社など13企業・団体が来日。当日は約100名の旅行業界関係者が参加し、各ブースでは今後の商品造成に向けた活発な商談がおこなわれた。

スイス政府観光局メディアマネージャーの押尾雅代氏は、「これだけのサプライヤーが来日するほど、現地は日本市場の復活を待ち望んでいる。今回の水際対策緩和を機に、日本からの旅行者が回復することを期待したい」とコメントした。

会場では来日した各サプライヤーより、この数年間で進んでいる新たな山岳交通プロジェクトや持続可能な取り組みについても積極的に情報提供がおこなわれた。

ヨーロッパで最も標高の高い駅「ユングフラウヨッホ駅」へ結ぶユングフラウ鉄道は、2020年12月に新ロープウェイ路線「アイガー・エクスプレス」を開通。新路線では、玄関口であるグリンデルワルトから世界遺産のアイガー氷河駅までをわずか15分でつなぐ。

アルプスの雄大な景観の中を走るレーティッシュ鉄道は、2022年10月29日、世界最長の旅客列車でギネス世界記録に挑戦する。世界文化遺産にも登録されているアルブラ線・ベルニナ線のルートを、全長約2キロメートルの車体で走行する計画だ。

さらに2023年夏には、ツェルマットから標高3883メートルの「マッターホルン・グレッシャー・パラダイス」を経て、イタリア・チェルヴィニアへ結ぶ新ケーブル路線を開通する予定。ケーブルカーによるアルプス越えが可能となる。

ワークショップ会場の様子

スイスの持続可能な観光への取り組み

大自然に囲まれたスイスは、古くから水力発電エネルギーを山岳鉄道に利用するなど、自然と共存した開発をおこなってきた。コロナ禍の間に進んでいる持続可能なプロジェクトも多数あり、旅行業界向けに紹介された。

スイス政府観光局は、観光業界のサステナビリティ共通ブランド「スイステナブル」を制定し、観光分野でのサステナビリティへの取り組みを積極的に推進している。「スイステナブル認証」と呼ばれる認証プログラムは、持続可能な取り組みをおこなうホテルや観光施設、交通機関などを3段階のラベルで認証。旅行者に向けて、各事業者の取り組み状況を可視化するとともに、さらなる持続可能性へのムーブメント醸成を目指している。

新プロジェクトでは、アルプスのパノラマビューで知られるシルトホルン山頂までを結ぶロープウェイ建設計画「シルトホルンバーン20XX」が進行中。1960年代に開通した現行路線と比較し、輸送能力拡大とエネルギー管理の大幅な向上を目指す計画だ。ロープウェイの稼働時のエネルギーを利用した発電と、中間駅に設置したソーラーパネルでの発電をバッテリーに蓄電し、エネルギー需要のピークを最適化する。これにより従来のロープウェイに比べて輸送能力が2倍になり、エネルギーは約10パーセント削減できるという。

また、130年にわたり大自然の中を走るレーティッシュ鉄道も、古くから環境に配慮してきた。1910年代には、ルート最高地点にある湖で水力発電用のダム・貯水湖がつくられ、ベルニナ線は1910年の開通当時から電力で運行。2013年からは、鉄道と関連施設の運営を100%水力発電で実現しているという。

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