2023年の観光産業に起きる5つのことを予測、岐路にたつサステナビリティから、アジアの未来まで ―フォーカスライト・カンファレンス2022

2022年11月にアリゾナ州フェニックスで開催された「フォーカスライト・カンファレンス2022」には、1200人を超える観光産業のトップらが世界中から集まった。カンファレンスではさまざまなセッションが設けられ、業界のリーダーたちが活発な議論を展開。フォーカスライトが今年のイベントでの議論から2023年に起こりうることとして5つの予測をまとめた。

1. 回復期から本格的な勢いへ

今年のカンファレンスでは、アジアを除き「回復」に関する話は少なく、2023年に向けた「勢い(Momentum)」の話が多く聞かれた。(アジアを除く)世界において、旅行業界は少なくとも収益に関してはパンデミックからほぼ完全に回復。 ホテルの客室売上高は 2019年の最高値を約10%上回り、航空会社の売上も約4%増。OTAも追いつてきている。

現在のインフレ下でも旅行需要は落ちていない。持続的な成長に向けて将来は不透明だが、旅行に関していうと、消費者の回復力は強い。世界的な投資アドバイザリー企業Evercore社のシニア・マネージング・デイレクターのマーク・マハニー氏は、アマゾンやメタのように大量の人員削減が行われても、それがバケーション計画にどれだけの影響を与えるのか疑問だと述べている。

「Holding the Line」セッションに登壇したホテル業界のリーダーたちはいずれも2023年について楽観的な見方を示した。チョイスホテルはすでに2019年の収益を上回っているという。OTAアゴダの企業開発担当副社長ティム・ヒューズ氏は「人々は旅行をやめない。ただ、旅行先を変えるだけ」と話す。飛行機の代わりに電車を使うとか、遠出か近場か、そういった選択はあるにしても「旅行に対する人の欲求は変わらない」と続けた。

2. 岐路に立つサステナビリティ

サステナビリティのテーマは、カンファレンスを通して、活発に議論された。さまざまな統計によると、消費者は環境に配慮した選択をするだけでなく、場合によっては持続可能な選択肢にもっとお金を払っても構わないと思っている。そのような状況で、2023年は企業の本気度が試される年になるだろう。

OTAホッパーの創業者でCEOのフレッド・ローランド氏は、企業のCO2排出について「緊急事態」と警鐘を鳴らし、「すべての顧客のCO2排出をオフセットすべきだ」と訴えた。ホッパーでは販売ごとに植林を進めるプログラムを展開している。

エクスペディアCEOのピーター・カーン氏は、「グリーンウォッシュ(まやかしのサステナビリティ報告)」について言及。「監査可能で、現実的で、明確に定義されたデータが得られるまで、業界はESG経営で真剣な行動を取らない」。結局は、欧州で見られるように、当局による規制頼りになる可能性が高いと見ている。

3. ブロックチェーン、Web3.0、NFT、メタバース

ブロックチェーン、ウェブ3、NFT、メタバースは、おそらく最も物議を醸すトピックだろう。多くの人は、やるべきことが多ければ、まだ十分に実証されていない新しいテクノロジーを運用することは望んでいない。ただ試したいためだけに、新しいテクノロジーに早々と足を踏み入れることは危険だ。

ブロックチェーン、Web3.0、NFT、メタバースに関して、先駆者である必要ないないのだ。航空券のNFTの可能性を強く信じているDespegar.comのCEOであるダミアン・スコキン氏は「いずれ、そのような新しい技術はそれぞれ関連性を持ってくる」と話すが、Etraveli GroupのCEOマシアス・ヘドランド氏の「パイオニアになる必要はない」との意見には同意した。

ヘドランド氏は「シンプルなことに集中し、より実用的になろう」と話した。最も適切な言葉は、カヤックの創業者兼CEOのスティーブ・ハフナー氏が話した「理解できないものには投資すべきではない」かもしれない。

4. 2019年との比較はもうやめる

旅行業会の健全性について、もう2019年との比較はやめるべきだろう。航空やホテルなど多くのセグメントで、すでに2019年の実績を超えている。専門家によると、旅行需要は減少しておらず、労働力不足もまだ十分に改善されていないため、価格の上昇は続くと見ている。旅行者は、旅行代金で妥協するか、あるいは、旅行のために生活費の何かを削る必要が出てくる。

UBSマネージング・ディレクターのロイド・ウォルムズリー氏は、インフレなどの影響で「価格が2019年レベルに戻るとは思わない」と話す。言い換えれば、2019 年はもはや「通常基準」にはならない。あまりにも多くの外部要因の力が働いているため、比較することすらできないのだ。

5. 未来は再びアジア

パンデミックからの回復のなかで、アジアの旅行再開は遅れたが、日本、東南アジア、韓国、インドなどでは国境再開後、旅行熱は再び熱くなっている。日本企業として登壇したベンチャーリパブリックCEOの柴田啓氏は「日本はインバウンド受け入れで準備万端」と話した。円安のために日本は今、お買い得な旅行先になっている。あとは中国。中国のアウトバウンドが復活すれば、旅行市場は再び活況を呈することになる。

アトラスCEOのメリー・リ氏は、1億5500万人のアウトバウンド市場をもつ中国が「次の大きなうねりになる」と予測。アゴダのヒューズ氏も「誰も見たことのない需要になるだろう」と予見する。WiT創設者のシュウ・フーン・イエ氏は「未来はアジアにある」と話した。

※トラベルボイスはフォーカスライトの公式メディアパートナーです。

著者:Lorraine Sileo氏(Phocuswright Research創業者) 

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