ヴァージン・オーストラリア航空は、2023年6月28日から羽田/ケアンズ線に毎日運航で新規就航すると発表した。機材はボーイング737-8を使用。日本発の販売は2023年1月初旬を予定。すでにオーストラリア発については販売を開始している。このほど同航空から責任者が来日し、新規就航の背景や販売戦略を語った。
同航空は2020年3月に羽田/ブリスベン線の就航を計画していたが、コロナ禍で断念していた経緯がある。今回の日本就航でケアンズを選んで理由について、日本就航を担当したエグセクティブリーダーシップ・チームでベロシティ・フリークエントフライヤーCEOのニック・ローラック氏は、「グレートバリアリーフや世界最古の熱帯雨林などの世界遺産のゲートウェイで日本人の観光需要が高く、ケアンズ空港をハブとした豪国内線も充実している」ことを挙げた。
ケアンズ空港で航空開発を担当していた経験があるセールス担当ジェネラル・マネージャーのダレン・マクダーモット氏は「ケアンズにとって日本人旅行者が重要なことはよく分かっている。現在のところ需要はまだ戻っていないが、来年の就航までには日本の海外旅行市場は活発になるのではないか」と期待を寄せた。
また、「ケアンズ空港は内際乗り継ぎが5分ほどで可能なコンパクトな空港」(マクダーモット氏)であることから、ケアンズを最終目的地とする旅行者だけでなく、乗り継ぎ需要の取り込みも可能との考えを示した。同航空は現在、ケアンズからブリスベン、シドニー、メルボルン、パース、アデレードなど国内主要都市に週150便以上の国内線ネットワークを持っている。
同路線では双方向の需要が見込まれるが、マクダーモット氏は旅客構成について「シーズンによって変わってくるが、年間平均で60~70%が日本人旅行者」と見込む。加えて、ローラック氏は「羽田はパートナシップを組むANAの国内線ネットワークよって、オーストラリア人を日本の地方へ送客できることから、地方創生にも貢献できる。一方で、日本の地方の旅行者もオーストラリアに行きやすくなる」と話し、羽田就航のメリットを強調した。
バランスの取れたチャネルで販売
日本での販売に向けては、来年1月初頭にも日本語ホームページを開設予定。流通については、「従来の旅行会社はグループが強く、OTAは個人旅行に強い。ホームページ上での直販やコードシェアのANA経由も増えていくだろう」(マクダーモット氏)として、バランスの取れたチャネルで販売していく考えを示した。また、新たに日本市場を統括する「コマーシャルマネージャージャパン」も任命したほか、日本のGSA選定も最終段階に入っていることも明かした。
このほか、ローラック氏は一般消費者の認知度向上の必要性についても触れ、「来年にもオーストラリア政府観光局(TA)やクィーンズランド州政府観光局などとプロモーションを展開していきたい」と話した。
使用機材の座席仕様はまだ未定だが、ビジネス、エコノミーX(足元スペースがより広いエコノミー席)、エコノミーの3クラス制になる予定。日本路線向けとして、日本語の機内エンターテイメントを準備するほか、日本語対応のキャビンアテンダントも採用する計画だという。
機内食については、ビジネスクラスは無料で提供。そのほかは機内メニューから購入することになる。また、アルコール類は有料になる。
ANAとのコードシェア拡大、来年にはマイレージプログラムも
今回の日本就航に合わせて、ANAとのパートナシップを拡大する。現在、ANAはオーストラリア国内線でヴァージン・オーストラリア航空とコードシェアを実施しているが、両航空の日豪間国際線にも拡大。将来的には、ANAの国内線にヴァージンオーストラリア航空のコードを付与することも計画する。
さらに、来年半ばには、ヴァージン・オーストラリア航空のマイレージプログラム「ベロシティ」とANAの「ANAマイレージカード」との特典相互利用も開始する予定だ。
今後、海外旅行市場が本格的な復活に向かうなかで、日豪の航空会社の復便も見込まれ、競争も激しなっていくことが考えられるが、ローラック氏は「ANAとのパートナーシップで、競合というよりは、日豪間の旅行市場のパイを拡大していきたい」と意欲を示した。