豪シドニー、MICE誘致で日本市場にアプローチ、中小イベントも対象に新たな助成金で支援へ

オーストラリアの最大都市シドニーへのMICE誘致を行うビジネス・イベンツ・シドニー(BEシドニー)はこのほど、コロナ禍からの回復途上にある日本市場向けに2023年、中小規模のMICEも対象に含めた様々な支援策を強化すると発表した。

シドニーでは2023年、シドニー・オペラハウスが50周年を迎え、年間を通じて記念イベントが予定されている。またニュー・サウス・ウェールズ州立美術館、ロイヤル・ランドウィック競馬場、歴史建造物「シェル・ハウス」などでもイベント対応可能な施設が相次ぎオープン。新しいアトラクションや観光サービス、新規ホテル開業も続く。

こうしたシドニー最新情報の紹介と、日本からのMICE誘致のため、このほど来日したBEシドニーのエグゼクティブ・ジェネラルマネジャー、クリスチャン・ニコルス氏は「3年ぶりに来日することができた。法人顧客や旅行各社からは、バーチャルはもういい、リアルで対面でのイベントを、との要望が強く、なかでもチームメンバーの絆を深めるインセンティブ・プログラムへの需要が大きい」と話した。

ただし、同氏は「オーストラリアが国境をオープンしたのは2022年3月で、今やマスクも不要だが、日本の場合、まだ海外渡航がようやく平常化したところで、健康や安全、予算への心配が根強いことも理解している」と言及。こうした不安感を払しょくし、シドニーでのイベント成功をサポートするために、BEシドニーでは来年、日本および韓国市場向けに様々なキャンペーンを展開する。

なかでも今回、初の試みとなるのが、1年間の期間限定で実施するアジア助成金で、MICE参加者1人当たり50豪ドル(約4600円)を提供する。対象となるのは、2023年4月から2024年3月までの期間に、シドニーおよび周辺で3泊4日以上、参加者100~400人規模のビジネスイベントを開催する日本の企業や団体組織。助成金を受けるためには、事前申請が必要で、受付は2023年2月8日から、申請締め切りは4月6日の予定。

これまでBEシドニーでは、400人以上の大型イベントを対象に、主催者の目的や要望に応じてカスタマイズしたプログラム作成や費用サポートなどを行ってきた。こうした大型イベント向けの支援も、引き続き継続する。

中小MICE向けにプラットフォーム構築も

ニコルス氏は「MICE開催件数では、中小規模のものの方がはるかに多い。これを効率的にサポートするために、BEシドニーでは、小規模MICE開催者向けのコンテンツや支援サービスを揃えたデジタル・プラットフォームを、サプライヤー各社とも連携しながら構築していく計画を進めており、今回の助成金は、その第1弾でもある」と話す。

法人顧客や旅行関係各社など、利用者からのフィードバックを分析しながら、中小MICE向けに必要なサポート内容を絞り込み、早ければ2023年半ばには本格的にプラットフォームを稼働したい考え。BEシドニーには、民間企業が100社以上、参画しているが、こうした活動予算の大半は、ニュー・サウス・ウェールズ州政府から拠出されているという。

一方、コロナ禍を経て、MICE市場で起きている変化について、日本を担当するBEシドニーのクライアントエンゲージメント・マネジャー、ルーシー・ジン氏は「SDGs関連の情報提供の要望がやはり増えている。イベント参加者向けのアクティビティでは、海岸のごみ拾いなど地域コミュニティに資するもの、排出ガス削減など環境対策につながるプログラムなどへの関心が高くなっている」と指摘する。

サステナブルなMICEは、予算より手法

世界でも日本でも、サステナビリティへの関心度には、クライアントによる温度差が大きいが、「非常に高い関心を持っている少数派にも対応できるよう、体制を整えている。こちらからアイディアを提案したり、質問することも我々の役割だと考えている」(ニコルス氏)。

さらにニコルス氏は、サステナブルなMICE開催について、予算の問題より、やり方の問題であることも指摘。「例えば、シドニー国際コンベンションセンターのパーティーでは、テーブルを花ではなく、果物や野菜で飾る“食べられるセンターピース”を用意している。イベント終了後、これを調理して地域のチャリティー団体に寄付している」。

世界有数の天然資源国、オーストラリアだが、同国政府はこのほど、2029年に開催される国連気候変動枠組み条約の第31回締約国会議(COP31)の誘致を表明。目下、産業界から大学などの研究機関まで、国を挙げて国連のSDGs目標達成へ取り組む気運が急速に高まっているという。「太平洋諸国との共同開催を目指している。実現すれば、海面上昇など、待ったなしの課題に世界の目を向けるきっかけにもなる」とニコルス氏は期待を示した。

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