ANA、中期経営戦略を策定、航空と非航空との事業回遊を促進、2023年国際線はコロナ前の7割を想定

ANAホールディングスは、2023~2025年度のグループ中期経営戦略を策定した。主力の航空事業を中心に収益を拡大しつつ、非航空事業を強化し、双方の事業の回遊を高めることで、2025年度には売上高2兆3200億円(2023年度1兆9800億円)、営業利益2000億円(同1200億円)、純利益1220億円(同630億円)を目指す。

芝田浩二社長は会見で「2025年度の目標は、2018年度に2020年度で構えていた数字と同じ。2025年度でコロナ前の身の丈まで戻し、2030年度に向けて成長軌道に乗せていく」と発言した。

また、合わせて、財務基盤の改善を進め、2025年度には有利子負債を1兆1000億円に圧縮し、自己資本比率を37%水準へ改善させる。

航空事業マルチブランド化、2023年度国際線需要はコロナ前70%と想定

中期経営戦略での事業戦略の柱は3つ。主力の航空事業では、マルチブランドの最適化と貨物事業の拡大で利益を最大化させる。このうち、中距離国際線を運航する新ブランド「Air Japan」については、2023年度下期に就航。LCCと競合可能な運賃水準で、成長性の高い東南アジアを中心に路線展開する。

ANAは、国際線で羽田・成田路線を積極的に再開・増便し、国内線では幹線を中心に路線展開する。また、2025年度からは国内線と国際線のサービスプラットフォームをアマデウス「Altea」に統合することで、「ANA Smart Travel」を実現していく。

LCCのPeach Aviationはレジャー層を中心にアジアからの訪日需要の獲得に注力する。

ANAでは、2023年度の旅客需要を国内線はコロナ前の95~100%、国際線は70%を見込む。2025年度までの見通しとして、国内線は国内レジャーと訪日が増加するものの、ビジネス需要は従来より緩やかな回復と想定。一方、国際線については、日本発のレジャーの回復は緩やかと見込む。芝田社長は「国際線で一番弱いのは日本からのアウトバウンド。円安が125円程度で落ち着き、燃油サーチャージが下落すれば、期待できる」との考えを示した。

一方、生産量については、国内線は2023年度で2019年度比100%強、2025年度で同105%、国際線は2023年度で同80%、2025年度で同105%を見込んだ。

中期経営戦略を説明する芝田社長スペースジェットの中止で2025年度以降に新たな機種選定

生産量を支える機材戦略では、中・小型機を中心に増機。2030年度にはボーイング787型機を100機以上に増やす。グループの機材数はコロナの影響でコロナ前の300機から2022年度は267機まで減少したが、2025年度には290~295機に回復させ、2030年度にはコロナ前を超える水準に増やす計画だ。

芝田社長は、事業中止が決まった三菱航空機の「スペースジェット」についても言及。ロンチーカスタマーであるANAは、納入が遅れるなか、別の機材でカバーしてきたが、「2025年度以降は、代替機材の確保が必要になってくるため、次の小型機の選定に取り掛かることになる」と明らかにした。

ANA経済圏を拡大、スーパーアプリ化を実現

2つ目の柱は非航空事業での収益拡大。強化事業として地域創生などに取り組むほか、新しい事業創出として、すでに事業化が進んでいるアバターやメタバースに加えて、エアモビリティ、ドローン、宇宙の分野での事業化を検討していく。そのうえで、2025年度にはグループ主要7社で売上高4000億円、営業利益240億円を目指す。

3つ目の柱は持続的成長に向けたANA経済圏の拡大。ANAはこれまでANAマイレージアプリ中心とした「マイルで生活できる世界」の仕組み作りに取り組んできた。芝田社長は「航空と非航空事業との回遊を促進させる仕組みができた」と評価。今後は、2025年度までに、アバターやメタバースなどを含めてミニアプリを拡充し、2030年度までにスーパーアプリ化を実現する。経済規模としては、2025年度に年間400億円の増収効果、約2000億円規模の経済圏を目指す考え。

2025年度の目標のうち、2つ目と3つ目の柱の非航空事業で、売上高は6610億円、営業利益は310億円を見込む。

ANA経済圏の拡大へ(報道資料より)このほか、中期経営戦略では、持続可能な航空燃料(SAF)の本格的な調達も含めて、ESG経営を推進していく。また、DX戦略としてデジタル人材を2025年度までに2022年度比で1.6倍に、IT投資額を2023~2025年度で2020~2022年度比で1.5倍に増やす。芝田社長によると、設備投資は3年間で年度平均2700億円を計画し、そのうち、60%が航空機、残りがIT投資になるという。

10年ぶりの新経営ビジョン「ワクワクで満たされる世界を」

ANAホールディングスは、中期経営戦略に加えて、2030年に向けた新しい経営ビジョン「ワクワクで満たされる世界を」も発表した。経営ビジョンを策定するのは、2013年にANAホールディングス体制が開始して以来10年ぶり。

このビジョンのもと、世界中のヒト・モノ・コトの新たな出会いやつながりを創出し、非日常から日常、リアルからバーチャルへ事業領域を拡大。オープンイノベーションで国や企業を超えて、グループ内外の知識や技術をつなぐことを目指す。

また、社員のウェルビーイングを実現するとともに、利用者の人生を豊かにし、環境をはじめ社会課題の解決に取り組んでいことを掲げた。

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