大阪・関西万博の開幕に向け、「万博 + 観光」が本格始動、全国規模での交流拡大へ、そのロードマップを聞いてきた

2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開幕までちょうど2年前となる2023年4月13日、博覧会会場となる夢洲で起工式が行われた。今後、本格的なパビリオン建設が始まる。

2025年日本国際博覧会協会(万博協会)は、万博の効果を全国に波及させる取り組みとして「万博+観光」も推進。その活動も今年度から本格化する。「全国の自治体や観光事業者と機運の醸成を進めていきたい」と話す同協会の地域・観光部長の波々伯部信彦氏に、その方向性を聞いてみた。

オールジャパンで観光による交流拡大を

日本政府は昨年12月、万博に向けた全国的な機運を醸成していくために「万博交流イニシアチブ」を発表した。万博を契機に、コロナ禍で縮小した国内外との人的交流を復活させることで、地域活性化を進めていくことが狙いだ。

そのなかで、観光交流も交流人口拡大のひとつとして位置付けられている。波々伯部氏は「地域の魅力や伝統芸能などを来場者にも体験してももらい、それをきっかけに各地域に訪れてもらうことを狙っている」と話す。大阪・関西万博の正式名称は日本国際博覧会。本来的には日本での万博を意味することから、「オールジャパンで観光による交流拡大を進めていく」考えだ。

現在は、自治体や観光事業者との話し合いを進め、体制づくりを始めているところ。今年1月には、観光・旅行関連30団体・事業者と「万博を契機とした観光推進ネットワーク会議」を設立した。「万博+観光」に関する情報を国内外に発信していくほか、全国への送客や受入体制の整備などに取り組む。今年度からは、特定のテーマでワーキングチームを立ち上げ、「連携して機運の醸成を進めていく」(波々伯部氏)。

4月13日行われた起工式。いよいよ大阪関西万博が本格的に動き出す。地域を万博テーマの実践の場に

万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。波々伯部氏は「SDGsも含めて、今回の万博のテーマなどは観光と親和性が高い。地域が、そのテーマの実践の場になれば」と期待をかける。

万博を地域活性化の起爆剤と目論み、万博から地域に人を呼び込むプロジェクトを立ち上げた自治体もすでにある。兵庫県では、第1回「大阪・関西万博」ひょうご活性化推進協議会を開催。「尼崎運河クルーズツアー」「播州織ものづくり体験」などを誘客に向けたプレミア・プログラムとして先行選定した。

徳島県でも「大阪・関西万博とくしま活性化・魅力創出」の方針を打ち出している。万博をゲートウェイとして、徳島をまるごとパピリオンと捉え、持続可能な社会づくり、未来技術のショーケース、リアルとバーチャルとの融合の3つの取り組みで、徳島の魅力を発信していく。

また、関西2府8県4政令市、民間企業、関西広域連合、関西経済連合会は「EXPO2025関西観光推進協議会」を設立。広域観光促進を通じて万博開催効果を関西一円へ波及させていく。

波々伯部氏は「万博会場に近い地域では機運も高まってきた。今後は、離れた地域でも観光復活のきっかけとしてもらうように働きかけていく」と話す。

「観光+万博で万博の効果を全国に」と意気込みを話す波々伯部氏。

観光ポータルサイトの立ち上げも予定

地域の観光活性化で期待されるのが、万博を訪れるインバウンド観光客。協会では万博来場者を国内では2470万人、海外からは350万人を見込んでいる。インバウンドへのアピールについては「会場の外でのプロモーションが大切になってくる」との考えから、日本政府観光局(JNTO)とも連携し、「その地域に行ってみたいと思うような仕掛けを考えていく」方針だ。

地域でのインバウンド向け商品造成のコンセプトなど、具体的な取り組み方針は、今年のゴールデンウィーク後にワーキングチームを順次立ち上げ、関係者と議論していく予定。

また、会場内では地域の魅力を発信する場を設ける予定も。波々伯部氏は「持続可能な観光地づくりを万博の機会を活用して実践してもらう。地域にレガシーとして残っていくような取り組みが実践できれば」と話す。

万博協会は今年度、地域で造成された万博関連観光商品を提案する「万博+全国観光ポータルサイト(仮称)」を構築する予定。各地域が造成した商品の情報をまとめて発信するほか、関係団体とも連携しながら、万博+観光を訴求するプラットフォームとしていきたい考えだ。

全国の自治体や観光事業者に参加を呼びかけ

大阪・関西万博のコンセプトは「People’s Living Lab (未来社会の実験場)」。未来社会ショーケース事業では、「スマートモビリティ万博」「デジタル万博」「バーチャル万博」「アート万博」「グリーン万博」「フューチャーライフ万博」の6つの領域を設定。このうち、スマートモビリティ万博」では、万博で2地点間での空飛ぶクルマの運航を目指す事業者として4グループが選定された。

6つの領域で30ほどの社会実験事業が計画されており、今後各事業の内容が順次発表されていく。

「万博は、新しい旅行ニーズにマッチしたスタイルを切り開く機会になる」と波々伯部氏。年内には、入場券の前売りが始まる予定。大阪・関西から全国に向けた機運の醸成にとっても重要な年になる。波々伯部氏は「コロナ禍で低迷している観光復活に向けて、全国の自治体や観光事業者にも参加してほしい」と呼びかけた。

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…