日本観光ショーケース実行委員会は、2023年3月24~26日、大阪市のインテックス大阪で日本観光に特化した展示会イベント 「日本観光ショーケース in 大阪・関西」を開催した。2回目となる今年は、BtoB商談ができるビジネスデーを初日と翌日の午前中に拡大。全国の自治体や観光事業者など70団体が出展し、24~26日の3日間で合計3343人が来場した。
イベント初日の開会式では、日本観光ショーケース実行委員会の委員長、落合和之氏が、大阪で開催される2025年万博を控え、観光地の魅力を発信するイベントが大阪で開催される意義を説明。万博開催を控える来年も2月に開催が決まっていることを明かした。
来賓代表として挨拶にたった2025年日本国際博覧会協会、機運醸成局長兼地域・観光部長の堺井啓公氏は、万博の想定来場者数が国内2500万人、海外300万人の計2800万人が見込まれていることに触れ、「日本が誇る観光資源を万博に結び付け、相乗効果を作っていくことが重要」と呼びかけた。同会は「万博+観光」を推進している。
「万博×観光」へ、キーパーソンがトークセッション
ビジネスデーとなる24日には、「2025年大阪・関西万博に関するトークセッション」が開催された。2025年日本国際博覧会協会(万博協会)は、大阪・関西万博を契機として、国内外からの観光客誘客を進めるため、観光関係団体・事業者とのネットワーク会議を設立。同協会や構成員の取組み紹介や課題などの意見交換を通じて、「万博×観光」を推進し、万博開催の効果を全国へ波及させることを目指している。
また、万博協会と大阪観光局は、大阪・関西万博に向けた機運醸成を目的に事業連携する協定を締結している。トークセッションでは、観光事業者に対して「万博×観光」の推進の意義や、国内外から多くの来場者が訪れ、注目を集める機会を積極的に活用すべきという議論が展開された。
2025年日本国際博覧会協会企画局長の畠山一成氏によると、今後、地域で造成された万博関連の観光商品を「万博+全国観光ポータルサイト(仮称)」で国内外に発信していく予定。また、会期中に展開される「一般参加催事」は今夏に募集を開始する。
大阪万博のクリエイティブディレクター、大阪・関西万博催事企画プロデューサーの小橋賢児氏は、観光事業者や地域の観光資源、気付いていない魅力を「ありのままの姿だけでなく、いつもの姿をアップデートしていただきたい」と提案。一例として各地の文化・伝統として引き継がれる“祭り”を例に挙げ、準備など当日に至るまでの人々の動きや文化背景などのストーリーを載せることで磨き上げができるのではないかと語った。
小橋氏は、今後、万博での企画を構築していく中で「万博会場だけで完結しない、日本全体を万博会場にしていく」考え。万博会場をひとつの拠点として、そこを軸に全国に波及する企画としていく意欲を示した。そして、コロナ禍を契機にした人々の行動変容、テクノロジーの活用によって人々が場所を問わずに多様な拠点でフラットにつながることができる初めての万博になると指摘。「ここでの挑戦が大事。」と力を込めた。
公益財団法人大阪観光局理事長の溝畑宏氏は、「2020年東京五輪でできなかったことがある」とコロナ禍の東京五輪を振り返り、2025年の大阪万博では「今度こそ日本の魅力を発信していく時」と力を込めた。その中での大きなテーマのひとつとして、日本のサステナビリティ、SDGsの取組みを発信していくことに意欲を示した。
環境省が推進するサステナブル・ツーリズム
観光立国を推進するうえで、国は「観光立国推進基本計画」の計画案をまとめているところ。6年ぶりの改訂となる計画は、3月末に閣議決定を予定している。その大きな柱としては「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の3つのキーワードを掲げている。なかでも「持続可能な観光地域づくり」による観光振興による地域社会・経済の好循環に力点が置かれている。
イベント2日目には、環境省から自然環境局 国立公園課 国立公園利用推進室の室長、岡野隆宏氏が登壇。同省が推進する国立公園を軸にしたサステナブル・ツーリズムについて、日本政府観光局(JNTO) 企画総室の伊藤亮氏とともに語った。
まず、岡野氏は、環境省が推進する国立公園の観光では自然の「保護」と「活用」の両輪がある点を説明。環境を「保護」するために規制が必要になることもあるが、観光推進によって「利用」することで地域社会・経済に貢献するという点だ。そして、国立公園を持続可能にしていくうえで大事なのは「保護と利用の好循環」であると強調した。この好循環をもたらす観光が、サステナブル・ツーリズムといってよいだろう。
そして、日本の自然の成り立ちに、古来から人間の営みが関与している点を説明。今後の観光推進のうえで、自然観光は景観を見物するだけでなく、人々の文化や歴史とともに成り立っている「物語」を付加することで、旅の満足度を向上させることが重要であるとした。環境省では、各国立公園のストーリーを作成し、そのストーリーをたどる旅を提案している。岡野氏は、こうした観光が、今、日本の観光産業全体が推進する高付加価値化につながると述べた。
さらには、日本の国立公園は、環境省が推進してきたエコツーリズムを基礎として、海外の富裕層に求められるアドベンチャーツーリズムにまで発展させることが出来る観光素材であると自信を見せた。一方で、高付加価値化を実現するためには「仕組みづくり」が重要である点も指摘。その仕組みを構築するうえで、「物語」を伝えるガイドの重要性と不足している課題にも言及した。